PMS(月経前症候群)には、心身ともに様々な症状があります。
その中でも一番ツラいのが、うつ状態など精神的な症状ではないでしょうか。
PMSの原因は、女性ホルモン以外にもたくさんの原因があることがわかってきました。不明な点はまだ多く残されています。
とはいえ、現在わかっている原因を知ることで、PMSの症状に気づいて前向きに対処できるようになる可能性があります。
ひとりでガマンして苦しみ続けないでください。PMSで病院にかかることは甘えではなく普通のことなんです。
この記事がPMSのツラさをかわしていく参考になれば幸いです。
PMSの症状「うつ状態」を起こす原因
PMSの原因は、たくさんの要因が複雑に絡み合っていて、その症状はじつに200~300もあるといわれています。
なかでもPMSの重大な精神的症状である「うつ状態」の主な原因は、次の3つだといわれています。
- ホルモンや神経伝達物質の急激な変化
- 機能性低血糖症
- 鉄欠乏性貧血
それぞれについて、順にみていきましょう。
1.ホルモンや神経伝達物質の急激な変化
PMSによるうつ状態に関係するおもな神経伝達物質は2つあります。
それが、セロトニンとGABAです。
セロトニン
PMSの症状としてのうつ状態は、排卵時に起こるホルモンの急激な変化で、脳内の神経伝達物質「セロトニン」の分泌が低下するために引き起こされるセロトニン説が広く知られています。
セロトニンは別名「幸福ホルモン」とも呼ばれ、喜びを感じ、やる気や活力などをコントロールしています。
また排卵すると、エストロゲンというホルモンの分泌量が減っていきます。これにともない脳内のセロトニンも減少するため、頭痛やうつ状態を引き起こすといわれています。
さらにそれとは逆に、エストロゲンの分泌が過剰になった場合にも、うつ状態が引き起こされることがわかってきました。
具体的には、軽度のPMSの症状*に加えて、不安、気分の動揺、イライラ、不眠、頭痛、疲労、むくみ、性欲の減退、手足の冷え、低血糖、ビタミンやミネラルの欠乏を起こすといわれています。
*PMSの症状についてはこちらの記事をごらんください。
生理前の辛いうつ状態。PMS・PMDDセルフチェック【保存版】
また、ビタミンやミネラルが不足すると、セロトニンやドーパミンなどの体内での合成がうまくいかなくなって、うつ状態を悪化させやすくなります。
この悪循環には気をつけなければいけません。
それから、少しずつで良いのでセロトニンを増やす習慣を身につけるようにしましょう。
GABA(ギャバ)
その他、PMSに関係する神経伝達物質のひとつに、GABA(γ-アミノ酪酸)があります。
GABAには「抗ストレス作用」があるので、脳や神経の興奮を鎮め、リラックスさせて気持ちを落ち着かせる働きがあります(参考:ギャバ・ストレス研究センター)
ちなみに、GABAとセロトニンはいずれも抑制性の神経伝達物質で、両者には深い関連性があるといわれています。
たとえば、プロゲステロン(黄体ホルモン)の代謝物質がGABAの働きに影響して、セロトニンの分泌を減少させることが報告されています。
2.機能性低血糖症
ヒトの血糖は、インスリンというホルモンによって正常範囲内に調節されています。
このインスリンは血糖値を下げる働きをしますが、排卵後の黄体期で多量に分泌されるプロゲステロンという黄体ホルモンが、インスリンの働きを低下させます。
すると、いつものインスリン分泌量では高い血糖値を下げることができなくなります。
このように高血糖の状態が続くと、高い血糖値を下げようとしてカラダはさらに大量のインスリンを分泌させます。
その結果、必要以上に分泌されたインスリンの働きで、血糖値が急激に下がり過ぎて低血糖の状態になります。
このように栄養不足で起こる低血糖とは違う状態を「機能性低血糖症」といいます。こうして起こった低血糖によって、うつ状態が引き起こされます。
機能性低血糖症になると起きること
この状態になると下がり過ぎた血糖値を上げようとして、今度はアドレナリンやノルアドレナリンなど興奮性の神経伝達物質が過剰に分泌されます。これらには、感情を高ぶらせ興奮させる働きがあります。
アドレナリンやノルアドレナリンは適量であれば「やる気」や「頑張り」につながりますが、機能性低血糖症では急激かつ大量に分泌されるので、感情のコントロールができなくなり、緊張や興奮がエスカレートして攻撃的になるという症状を引き起こします。
もろもろの判断制御が効かなくなる
インスリンは別名>「太るホルモン」とも呼ばれています。
低血糖になると、食べ物で血糖値を上げようとして極度の空腹感を感じます。それらが、抑えきれない過食や体重増加の原因になっています。
また、低血糖の状態では、冷静な思考や判断力が低下し、眠気やだるさ、ボーっとする、感情のコントロールがうまくいかないなどのうつ状態と似た症状が起こります。
3.鉄欠乏性貧血
血液の最も重要な働きは、酸素を全身に供給することです。血液中の赤血球にある血色素(ヘモグロビン)が、酸素を運びます。
貧血は、このヘモグロビンの量が正常よりも少なくなった状態です。
貧血にはいくつかの種類がありますが、PMSの症状であるうつ状態に影響しているのが「鉄欠乏性貧血」です。
この貧血の症状には、以下のようなものがあります。
【隠れ貧血で起こる症状】
肉体的症状(不調)
- めまい、立ちくらみがする
- 耳鳴りがする
- すぐ息切れや動悸がする
- 頭痛、肩こり、腰痛
- 食欲不振
- 便秘、下痢
- 微熱がある
- 疲れやすい、常にだるい
- むくみやすい
- 風邪をひきやすい
- のどに違和感がある
- くしゃみ、鼻づまりが多い
- 口角・口内炎、湿疹
- 舌のしびれ、赤みがある
精神的症状
- イライラしやすい
- 気が重い、憂鬱感
- 注意力の低下
- 集中力の低下
- 記憶力の低下
- 神経質になった
- やる気がわかない
- 音に敏感
- 光に敏感
婦人科系症状
- 生理痛が重い
- 経血量が多い
- 月経不順である
- 子宮内膜症や子宮筋腫がある
その他
- 力が弱くなった
- 顔色が悪い、くすんでいる
- まぶたの裏が白い
- 寝起きが悪い、眠りが浅い
- 抜け毛が多くなった
- 爪が傷んでいる(線状のスジ・凸凹)
- 気がつくとアザができている
出典:鉄不足による「隠れ貧血」とPMS(月経前症候群)の関係
この他に、冷え性や無性に氷を食べたくなる「異食症」などの症状が起こる場合もあります。
改めてみてみると、これはPMSやPMDDの症状と非常によく似ています。
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女性は生理のたびに、40ml前後の血液を失うので、直接的な貧血の原因になっています。この血液量を鉄に換算すると約20mgに相当します。
そのため、生理のある女性は、男性に比べて圧倒的に鉄欠乏性貧血の割合が多くなっています。
特に月経過多の場合には、この倍以上の鉄を失っているので、貧血の症状も重くなりがちです。
虚血性貧血にも陥りやすい期間がある
また、生理前の子宮は、排卵後から子宮内膜が増殖期~分泌期に移り、成熟して受精卵を待つ態勢になっています。
成熟するために、本来ならば脳へ供給されるはずの血液が、一時的に子宮の周りに集中しています。その結果、この期間は脳への血流が減少して「虚血性貧血」という状態になっています。
この場合も、上記のようなPMSのうつ状態と同じ症状が起こります。
女性にとって特に重要な「鉄」の存在
血液は、良質なたんぱく質と鉄とで造られます。
重要な材料である体内の鉄は、約2/3がヘモグロビンの中にあります。
これが足りなくなった場合にすぐ補充できるよう、残りの1/3は肝臓に蓄えられています。これを貯蔵鉄といい、この蓄えがなくなると鉄欠乏性貧血になります。
ヘモグロビンの量が正常で貧血とは診断されない状態でも、この貯蔵鉄が少ない場合は「隠れ貧血」または「貧血予備軍」と呼ばれており注意が必要です。
そのため、生理前のうつ状態に貧血が影響しているかどうかを調べる際には、一般的な検査に加えて、さらに詳しい血液検査を行います。
- 赤血球の数、大きさ
- ヘモグロビンの量
- 網状赤血球(まだ未熟な赤血球)
- 血清中の鉄
- 血清中のフェリチン(体内の貯蔵鉄の量を反映している)
病院によって貧血と判断する値に若干の違いがありますが、標準値は下表のようになります。
出典:慶應義塾大学医学部血液内科「鉄欠乏性貧血診断」
このように、女性にとって鉄はとても重要です。子宮筋腫などで経血量が多い場合も、積極的に鉄の補充を心がけましょう。
また、10代の女性は、成長期の途中で初潮を迎えており、とくに鉄をたくさん必要としているためよりいっそう鉄の補充が必要です。
高カロリーなジャンクフード(カロリーはあるが栄養価の乏しいもの)やファストフード、インスタント食品を好んで食べている場合には、鉄の摂取量が不足している可能性が高いので気をつけましょう。
砂糖や甘味料の入った炭酸飲料や、ケーキやお菓子、ポテトチップスなどのスナック菓子をたくさん食べる習慣の人も、同様に鉄が不足しがちです。
貧血予防食品はコンビニでも売ってるのでぜひ。
PMSの症状には、普段の食生活が大きく影響しています。
さいごに
PMSの症状の中でも特にうつ状態は、まだまだ周囲の人たちから充分な理解を得られていないのが現状です。
あなたのうつ状態がPMSの症状であれば、まず、婦人科での相談が重要です。
その前にぜひおすすめなのは、「PMSメモリー」をつけることです。
PMSメモリーとは
PMS(月経前症候群)を診断するために開発された道具。アンケートと異なり、日々の症状の程度を詳しく把握することができる。
*朝(目が覚めたとき)とそれ以外の時間に感じた具体的な心身の症状を、程度(3段階)とともに記録する
*程度は、①少しあるが日常生活には影響なし ②日常生活に影響する程度ある ③激しい
*基礎体温、体重、経血量、生活状況(運動、食事、飲酒、薬の摂取等)を記録する
基礎体温と体調や気分を細かく記録することで、PMSの症状やうつ状態のサインがでていないかどうかを簡単に知ることができます。
PMSのいろいろな症状の原因がわかれば、適切な治療や対処につなげられるでしょう。辛いうつ状態も、自分で予防や軽減できる可能性が充分あります。
症状チェックには、こちらの記事をあわせてご覧くださいね。
生理前の辛いうつ状態。PMS・PMDDセルフチェック【保存版】
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。