定期的に訪れるPMSの辛いうつ状態をただひたすら我慢していませんか?
PMSは健康保険を使って医療機関できちんとした治療が受けられます。
「生理のことで、病院に行ってもいいの?」
もしかしたら、そんなふうに考えて無理にガマンして辛い日々を送ってはいないでしょうか?
PMSやPMDDだけでなく生理痛なども、日常生活や社会生活に支障があるレベルであれば、病院での治療が可能です。
「我慢するしか仕方ないんだ」という自己判断であきらめずに、まずは医師に相談することが大切です。
そして病院での治療とあわせて、自分自身のセルフケアがとても重要です。
この記事ではPMSのうつ状態治療の3ステップを解説していきます。
PMSのうつ状態の治療まで3つのステップ
PMSの原因を取り除いてうつ状態から解放されるには、やはり医師による診断が不可欠です。
そのうえで適切な治療を受けながら、あなた自身も普段の生活を見直してPMSのうつ状態の改善につとめましょう。
「まだ、わたしはそんなにつらくないわ」
今はそうかもしれません。
けれど、加齢や出産などの影響で、知らず知らずのうちにPMSのうつ状態が悪化してゆく可能性も十分あります。
PMSのうつ状態の治療における3ステップは以下のとおりです。
- 生理が始まるとうつ状態が自然によくなっていることを確認する
- 基礎体温と症状の記録をつける
- 婦人科を受診して診断と治療を受ける
最初のステップは、自分に精神的な症状があるということを自覚することです。
まず、そこが治療の第一歩になります。
1.生理が始まるとうつ状態が自然によくなっていることを確認する
もしも、生理のサイクルとうつ状態のくり返し周期が一致しているのであれば、そのうつ状態は精神科や心療内科で治療する「うつ病」とは違っています。
PMSでは、生理が終わって排卵の直後から、次の生理がくるまでの間に、イライラや不安感、緊張感、感情のコントロールができない、激しく他人を攻撃してしまう、死にたくなるなどのうつ状態が現れます。
ですが、生理が始まってしまうと、嘘のようにそれらのうつ状態が消えて気分がラクになります。
しかし、ラクになったからと治療せずに繰り返していくうちに、次第に自分が嫌になり落ち込むことが増えていくことも。
場合によっては、職場の人間関係のトラブルに発展して退職に追い込まれることもないとは言い切れません。
あるいは、寛大なパートナーでも、いつかは許してくれなくなることがあるかもしれません。
でも、うつ状態が生理前に限定していることがわかれば、きちんと治療が受けられます。
2.基礎体温と症状の記録をつける
PMSのうつ状態を治療するには、その重症度にかかわらず
- PMSの症状を自覚すること
- 日常のストレスのコントロール
- 生活改善
の3本柱が重要になっています。
その中でPMSの症状を自覚するために最も有効で簡単な方法が、基礎体温と様々な症状を記録することです。
これは、「認知行動療法」という治療の一環でもあります。もちろん、診断の重要な手掛かりにもなります。
病院を受診すると、この記録を指導されますが、できれば今すぐに始めた方がよいでしょう。
3ヵ月分以上の基礎体温と自覚症状の記録があれば、受診したその日から適切な治療を受けられる可能性が高くなります。
もし、3ヵ月も我慢できなければ、1ヵ月分の記録だけでも大丈夫です。
記録には、「基礎体温表」や「PMSメモリー」などがあります。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
▼ 基礎体温表
生理前の辛いうつ状態。PMS・PMDDセルフチェック【保存版】
▼ PMSメモリー
3.婦人科を受診して診断と治療を受ける
婦人科では、様々な症状と原因に応じて治療方針が検討されます。
(出典:日本産婦人科学会雑誌51巻6号「月経前症候群(PMS)への対応」)
上図のように、女性ホルモンの影響で神経伝達物質や脳内ホルモンに変化が生じて、PMSのうつ状態が起こってきます。
症状が軽い場合には、それぞれのからだの症状を緩和する薬で治療します。
からだの痛みを和らげて眠れるようになると、うつ状態がよくなる場合が多いからです。
それだけで症状が改善されない場合には、ホルモン剤やセロトニンを増やす薬などを使った治療が行われます。
ホルモン剤に少なからず抵抗を感じる女性もいると思いますが、ホルモンの影響をなくすことでセロトニンの減少を防ぎ、機能性低血糖症も防げるので、PMSの辛いうつ状態から解放される可能性が高まります。
同時に、生理の出血がなくなるので、貧血も改善しやすくなります。
また、人によっては漢方薬による治療も効果が得られる場合があります。
これは、薬局などで自己判断せずに、漢方の治療をきちんと行っている医師に相談することを強くお勧めします。
自己判断だと、自分のうつ状態の改善には効果がない薬に、高額なお金を払うことにもなりかねません。
まずは、婦人科の医師に希望を伝えてみましょう。婦人科では漢方薬を採用している病院が多く、そうでない場合でも必要に応じて漢方の専門医を紹介してもらえるでしょう。
漢方薬にも副作用がありますし、その効果・副作用、体に合う・合わないは実際に服用してみなければわかりません。
その点では病院で処方してもらう薬は市販薬よりも有効な配合成分が多く、しかも保険診療なので費用もずっと安く済みますから、お試しにはうってつけです。
PMSの治療で健康保険が適応になっている薬
PMSの治療で保険適応になっている薬は、経口避妊薬(飲み薬)と子宮内避妊リング(SUD)の2種類があります。
経口避妊薬(飲み薬)
飲み薬は、「ルナベルLD・ルナベルULD」、ルナベルのジェネリック薬品である「フリウェル配合錠LD」、そして一番新しい「ヤーズ配合錠」の3種類です。
費用は、飲み薬の場合は1シート(約1ヵ月分)2000円前後で、初診料または再診料と院外処方料などが加わります。
自由診療(自費)で処方されるその他の薬は、1シート3,000円前後の場合が一般的のようです。
飲み薬の場合は、1年分の治療費用が2,000円×12ヵ月で24,000円ほどになります。
参考1:池袋クリニック「低用量ピル(OC)の種類」
参考2:日経WOMAN Online「低用量ピル」の3大効果と使用法
子宮内避妊リング(SUD)
子宮内避妊リング(SUD)「ミレーナ」は、保険適用以前は装着に80,000円~100,000円ほどかかっていましたが、健康保険で処方できるようになりましたので、3割負担で30,000円前後となっています。
有効期間が5年間あるので、1年分の治療費は6,000円程度で済む計算になります。月1回の定期検診が必要です。
これは、エストロゲンの単剤なので、血栓症のリスクもなく、高血圧や肥満の方、喫煙者でも使用することができます。
ただし、出産経験の有無によって使用できるかどうかが変わってきますが、病院によって対応が違うため、まずは受診する婦人科で相談してみてください。
参考:池袋クリニック
経口避妊薬(飲み薬)の副作用「血栓症」について
「ヤーズ配合錠」を服用中の女性が3名死亡したことから、因果関係を否定できないとして厚生労働省から注意事項が発表されています。
ただし、内服していた経口避妊薬が、直接の原因であるとは断定されていません。もし、危険な副作用が明らかであれば、すでに発売中止になっているはずです。
そして、この3症例は医療機関で適切な診断・治療を受けていたならば、救命できた可能性があるともいわれています。
ピル大国である米国のデータでは、ピルを飲んでいない女性10,000人の中で、1年間に血栓症になる女性は1~5人ですが、ピルを飲んでいる女性では3~9人に増えるといわれています。
しかし、ピルを服用していなくても、妊娠初期には血栓症になる女性が10,000人中5~20人に増えています。出産後12週間では、更に40~65人に増加しています。
仮にピルの死亡リスクを「1」とすると、喫煙による死亡リスクは「167」にもなります(!)
つまり、専門家である医師の適切な管理のもとで治療する場合には、ピルは安全であると考えてよいでしょう。
参考1:「月経困難症治療薬ヤーズ®配合錠を服用される患者様とご家族の方へ」
参考2:Dr.Ezの産婦人科情報「ヤーズと血栓症について」
うつ治療薬のSSRIは保険適応になる?
うつ治療薬のSSRIは中等度以上のPMSや、PMDDの症状に対して治療効果があると認められていますが、婦人科の病名ではまだ健康保険の適用がありません。
そのため、症状が重い場合には「うつ病」やそれに関連した病名をつけて治療することになります。
Level3:気分障害が強いPMS/PMDD
A.症状のある日にのみSSRIを使用
B.毎日SSRIを使用
C.SSRIの効果がない、許容されない場合はSSRI投与を断念する前に少なくとも2つのSSRI(venlaflaxineを含む)を加え試みる。
D.黄体期のbuspirone投与
出典:日本産婦人科学会雑誌PDF「婦人科疾患の診断・治療・管理」
SSRIは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」といいます。脳内の神経伝達物質セロトニンは、神経細胞の末端で次の神経細胞へと情報を伝達する役割を担っています。
出典:http://pds.exblog.jp/
セロトニンが受け手側の神経細胞に届く前に、送り手側の神経細胞に再取り込みされてしまい、神経細胞間で情報伝達が上手くいかないことがセロトニン不足による憂鬱感の原因とされています。
SSRIはその再取り込みを邪魔して、セロトニンを脳内により多く留めておく働きをします。
うつ病の場合には、効果が出るまでに時間がかかることが多いのですが、PMSやPMDDの場合には比較的即効性があって、少量でも効果が出るとされています。
SSRIには次の4種類の薬があります。
1.レクサプロ
他の薬は少量から使い始めて様子をみますが、この薬はセロトニンだけに絞り込んで作用(選択性)するので、使用開始から10mgが使えます。
2.ジェイゾロフト
選択性はレクサプロよりも低いですが、多少のドーパミン作用があります。
3.パキシル
抗うつ効果が一番高い薬で効果がありますが、使用を中止する時に離脱症状が出やすい特徴があります。そのため、少しずつ時間をかけて薬を減らす必要があります。
4.デプロメール、ルボックス
比較的マイルドなSSRIです。薬の飲み合わせに注意が必要なことと、1日2回服用する煩わしさがあります。
SSRIでの治療は、その効果や副作用に個人差があるので、実際に服用してみなければわかりません。
そのため、医師とよく相談しながら、2種類以上の薬を試してみる必要があります。くれぐれも自己判断は厳禁です!
参考:医者と学ぶ「心のサプリ」SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の効果とは?
セロトニンを増やす方法についてはこちらの記事を参考にしてください。
幸せホルモン「セロトニン」をドバドバ増やす7つの方法【保存版】
さいごに
PMSの辛いうつ状態は、周囲の人たちから充分な理解を得られていないばかりでなく、自分自身を責めながら、気づかずに悪化させてしまうことがあります。
まず自覚する。そして、きちんと病院を受診する。
そうすることで、健康保険を使った治療を受けることができます。もう、一人で悩まないでくださいね。
もしも、あなたのうつ状態が生理前に限ったものではない場合は、こちらの記事が参考になるかもしれません。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。