世の中にはいろんなタイプの人がいます。不安に陥りやすい人もいるでしょう。緊張しやすい人もいるでしょう。
後悔をいつまでも引きずる人もいれば取り越し苦労してばかりの人もいるでしょう。
これらに当てはまる人は、自分のことを「心が弱い人間」だと思い込んでいないでしょうか。
性格と心の強さは関係ない
こういった性格は精神力とはまったく関係ありません。もともと人間の「心の強さ」にはたいして個人差はないのです。
心が強いとか弱いとか、ポジティブとかネガティブとかじゃなくただ、それがその人の個性なのです。
苦手意識は書き換えが可能
自分の性格は意識的に修正することができるので当然、これらの特性もコントロールすることができます。今回はその一つ“緊張”について取り上げたいと思います。
「緊張することがストレス」という人は多いようです。それは緊張に対する意味づけが、「いつも通りの自分ではいられなくなる好ましくない状態」というものだからです。
では、そもそも「緊張」とはどんな状態でしょうか。
緊張することの意味
次のような場面を想像してみてください。
あなたが夜道を歩いて帰宅していると、背後から誰かがつけてくる気配がします。駅からずっとあなたの後を確実につけてきています。
街灯のない道で、相手が足早に近づいてきました。こういう場面ではたいていの人は緊張すると思います。
相手は異常犯罪者かもしれない。ひったくり犯かもしれない。変質者かもしれない。あるいは、凶器を持った通り魔かもしれない。
「ヤバい。怖い。どうしよう?!」
走って逃げるか?
どこかに隠れるか?
誰かに電話するか?
思い切って振り返り、睨みつけてみるか?
こんなとき、体の自然な反応として全身に緊張が走っています。闘うにしても逃げるにしても、素早い判断と動作が必要だからです。
緊張は必要な機能
「緊張」の状態は、動物が何か重大な状況に直面したとき「闘うか逃げるか」の準備態勢をとっている状態なのです。生体のこの反応は「闘争・逃走反応」と呼ばれます。
闘争・逃走反応(fight-or-flight response)は1929年にウォルター・B・キャノンによって初めて提唱された動物の恐怖への反応のことです。
つまり、緊張は交感神経の作用による「生体の重要な働き」で、生存になくてはならない機能だから備わっているのです。
いないと思いますが、もし仮に「まったく緊張することがない」という人がもしいたら、それは重要な機能が停止していますから、イザという時には助からないかもしれません。
緊張すると起きること
緊張が生体にとって必要な機能であることは間違いないのですが、緊張すると実際にはどんな変化や反応が起きるのでしょうか。
たとえば
- 心臓がドキドキする
- 手足の震えが止まらない
- 汗を大量にかく
- 声が震える
- 字がうまく書けない
人によりほかにもいろんな反応が考えられますが、緊張したことによる結果はこのように「体の反応」として現れるだけなのです。
言ってみれば身体症状だけのこと
緊張は精神的・心理的な問題と思われがちですが「緊張した結果」=「精神的ダメージ」ではないんですね。単なる「体の反応」にすぎない。
言ってしまえば、これだけのものなんです。緊張したからといって、深刻なダメージにはなりません。
日常で緊張するのはどんなときか
緊張する場面にはどのようなものがあるでしょうか。
たとえば
- 大勢の前で話すとき
- 人前で何かのパフォーマンス(歌や競技)をするとき
- 人と一緒に食事をするとき
- 大勢が聞いている場所で電話をとるとき
ほかにも様々な場面が考えられますが、緊張する場面に共通するのは次のようなことです。
- 失敗が許されない状況
- 周りから注目されるような状況
- 人に見られている自分を強く意識したとき
緊張しやすい人の特徴
緊張しやすい人にはいくつか特徴があるようです。その特徴とは以下のようなものです。
- 人目や評価を気にする人。(テストが75点だったとか、体重が80kgだったとかいう数字そのものより、それを人に「どう思われるか」が気になる)
- 「◯◯しなければならない」という義務感が強い人。
- 几帳面、まじめ、心配性な人
- 実際よりも自己評価の低い人
- 白黒ハッキリつけたい人
- 人の気持ちを察するのが得意な人
- 物腰が丁寧で礼儀正しい人
- 職場のムードメーカー的存在
このように、緊張しやすい人はひと言でいうなら「いい人」が多いのです。
周囲は変に思っていない
そして、緊張している人に対して周りの人は「コイツ、こんなに緊張して変なヤツ」とは思っていません。
むしろその逆で、相手からは一生懸命で誠実なイメージを持たれることが多いのです。緊張している本人は信じがたいかもしれませんが、意外と好意的な印象を持たれるものなのです。
呼吸と緊張の関係
「緊張してはいけない」と思えば思うほどなぜか不思議なくらい緊張してしまうもの。それは意識がそこ(緊張状態)に集まってしまうからです。
この循環にハマるほどコントロールが難しくなります。
もしもハマッてしまった時は深い呼吸をします。こういう時は呼吸が浅くなっていますから、かなり効果的です。
腹式呼吸しながら緊張することはできない
僕が実践している呼吸法を紹介しておきます。まず、意識は息を吐くことに集中します。腹をへこませながら息を吐けるだけ全部吐き切ります。
- 口を尖らせて細く、長く、なるべく遠くへ息を飛ばすような意識で息を吐いていく
- 「これ以上は吐けない」ところまで吐き切ったら今度は鼻から思いっきり息を吸い込む
- 「これ以上は吸えない」というところまで吸ったらまた口を尖らせて息を吐いていく
これを3セットもやれば、かなり落ち着くはずです。
風に揺れる柳のように
昔、五木寛之さんの本だったと思いますが、その本で「対峙」と「同峙」という言葉を知りました。
対峙というのは、その感情に正面からぶつかって力でねじ伏せて支配すること。同峙というのは、その感情のなかに飛び込み身を任せつつも乗りこなすこと。
緊張という感情に対してはこの「同峙」のアプローチが良いと思います。
それは「別に緊張したままでもいいじゃないか」という、開き直りにも似た態度です。
抗うことなく受け流す
緊張に対しては、対峙ではなく「同峙」の心境で臨みましょう。大事な場面で緊張するのは当たり前のことです。
あなただけでなく、他の人も同じように緊張しているのです。ただ、うまく同峙しているから周りからはそう見えないだけ。
まとめ
いかがだったでしょうか?「緊張したまま」で人前に立っても、何の問題もないのです。
最後にもう一度ポイントを整理しておきましょう。
- 緊張しやすいことと心の強さ弱さは関係ない
- 緊張は生命維持に必要な機能だから備わっている
- 緊張できないヤツはいざというとき助からない
- 緊張は単に体の反応であり精神的なダメージではない
- 周囲は緊張している人を変な目で見てはいない
- 緊張したままでもいいじゃないかと開き直る
- 腹式呼吸をしながら緊張することはできない
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。