自分の指示したことをなかなかやらない相手に「コイツはホントにいうこと聞かない奴だな!」とイライラすることはよくあると思いますが、あなたの出した指示は適切なものでしょうか?
あいまいな指示を具体的な行動のレベルに落とし込むことを「行動的翻訳」といいます。相手がその行動的翻訳をできない場合、与える指示は翻訳の必要がないくらい具体的である必要があります。
子供はとくに具体的な指示が必要
子供の場合は現実的に経験値が不足しているため、フワッとした言葉だとそこに含まれる意図を推察理解して具体的な行動に落とし込むことができません。
とくに逐一の指示出しが必要になります。
「勉強しなさい」という指示
子供に「勉強しなさい」といってもしないのは、その指示が抽象的すぎるからです。その場合はこういえばいいのです。
「計算ドリルと漢字ドリルを2ページずつしてできたらお父さんに見せにきなさい」「19時にはTVを消して部屋に行きなさい」「勉強する時間だからタブレットをお母さんに預けなさい」。
「片付けしなさい」という指示
子供に「片付けしなさい」といってもしないのも、やはり同じ理由からです。
片付けるものが多すぎて何から手をつけていいのか分からない。あるいは、どこまで片付ければいいのか分からない。
その場合はこんなふうにいいます。
「ゲームソフトとリモコンとマンガの本を片付けて、ジュースを飲んだコップをキッチンへ持っていきなさい」「脱いだジャンパーと帽子とカバンを自分の部屋に持っていきなさい」。
これなら「何」と「何」をすればいいのか分かるので、子供にしてもすんなり動くことができます。
特に子供は悪気はなくても、何からすればいいのかが分からないと動けないものです。
「何度言ってもいうことを聞かないヤツだな!」と叱る前に、自分の指示の問題点を確認してみて下さい。
大人でも指示がないと動けない
実は行動的翻訳が苦手なのは子供だけではありません。大人でも何をすればいいか分からなければ動けないものです。指示や提案は常に具体的である必要があります。
「痩せろよ」という指示
残念ながら、あなたが毎日奥さんに「少し痩せたら?」と言い続けても、ケンカの原因になることはあっても奥さんは痩せたりはしません。
それは、「痩せろ」という指示が抽象的すぎて、一体何に気をつけて何をすればいいか分からないからです。
「食べ順に気をつけて、野菜から食べよう」とか「夜の食事は炭水化物を減らそう」とか「お風呂上りにストレッチをしよう」とか「食事の前には家の周りを20分歩こう」とか。
相手に本気で行動を促そうと思ったら、迷いようのないくらい具体的な指示に落とし込むことが必要です。
「仕事しろよ!」という指示
驚くかもしれませんが、上司や先輩に「仕事しろ!」といわれて固まって思考停止する会社員もいます。
彼のように「行動的翻訳」能力の高くないスタッフは「仕事」といっても多岐にわたるので、今この状況で何に手をつけて良いのかが分からないのです。
この場合も、「A社に対するプレゼン資料作成」とか「B社とC社の訪問アポ取り」とか「チラシの発注」とか具体的な指示を出すことが必要です。
上司からの2通りの指示の出し方
会社で営業を担当していると、夕方以降の時間帯にお客さんにTELコールをするという業務があります。このとき、上司の指示の出し方には2通りが考えられます。
- 5件アポがとれるまで電話しろ
- とにかく100件電話しろ
おそらく、新人の頃は後者の指示をされていた人が多いのではないでしょうか。
もちろんどちらも「アポをとる」という最終的な目的は同じですが、後者のほうがより具体的な指示であるため、実際に行動に移すまでのハードルがグッと下がるのです。
シンプルに「とりあえず電話をかけりゃいい」ということは分かるからです。
前者であれば、上手くいけば5件の電話だけで仕事が終わるかもしれません。その代わり、以下のようなデメリットがあります。
- 逆に1000件かけても終わらないかもしれない
- 先が見えずモチベーションが保てない
- とりかかる前の精神的負担(プレッシャー)が大きくハードルが高くてなかなかとりかかれない
とりわけ「アポをとる」前提の電話なので、1件目からハードルが高すぎてなかなか動けないという状態になりがちです。
後者であれば、何件のアポがとれようが100件はTELしなければなりません。その代わり、以下のようなメリットがあります。
- 指示の遂行が外的要因に左右されない
- 先の見通しが立つのでモチベーションを保てる
- 一定の量の中から質が生まれる(数稽古になる)
あなたの部下を動かすには、どちらの指示が良いでしょうか?
まとめ
いかがだったでしょうか?
今の時代、検索して情報を調べることはできるけど、自分の頭で考えることが苦手な大人が増えています。
答えは考えるものではなく検索するものだと思っている人は高学歴の人ほど多い傾向にあるそうです。
「暗記」「検索」には長けているけれども、自分の頭で考える訓練をしていなければ実社会では通用しないこともあります。
指示を出しても相手が動かない場合はその指示を「翻訳してみる」という発想をしてみてください。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。