僕たちは社会に出て平社員から少しずつキャリアを積んでリーダー、いわゆる管理職の立場になっていきます。
すると、これまでは「ヨコと上」にしか開かれていなかった職場の人間関係が「ヨコと上と下」という具合にちょっとだけ複雑になります。
これまで経験のなかった「部下との関わり方」に悩むリーダーはこの記事を読むことで、少しラクになれるかもしれません。
上司が格好つけ過ぎていないか
まずはじめに言いたいことは、「そんなに気張らなくてもいい」ということです。
「自分が上司で君は部下だ」なんて急に格好つけなくてももっとシンプルに、野球部の「部長と部員」くらいのノリでとらえたらどうかと思うのです。
いい加減に仕事をしろといっているのではありません。上司と部下との人間関係のイメージの話をしているのです。
立場が変われば会社から求められることも変わります。小売業の場合であれば、部下は「売ること」を上司は「売らせること」を求められるでしょう。
売らせるためには、部下に対する口出しも増えるでしょう。
でも、どうでしょうか。果たしてそれで部下のやる気が出るでしょうか。あなたが部下だった時のことを思い出せばわかるはずです。
- 信頼されている
- 正当に評価されている
- 自分の成長が実感できる
モチベーションはそういうところからやってくるものではなかったでしょうか。「君ならやれる。オレはそう信じてるよ」。上司のそのひと言がどれほどのモチベーションになったことか。
嫌われることがデフォルト
仮に、会社の方針がそもそもおかしなものであったとしても部下にそれを直接指示するのは上司であるあなたの役目です。当然、指示を受けた部下はそれを「あなたからの指示」として受け取ります。
それが不条理な内容であれば、部下は憤りを感じるでしょう。しかも、直接その指示を出したあなたに対して不満を抱くでしょう。その時すぐに反発してくる部下のほうが安心できます。
そういう人はあなたを嫌うことはないでしょう。
問題なのは、不満ながらも従順なフリをしている部下たちです。その集団は陰であなたへの不満を募らせていきます。そして“あなた”という共通の敵をもつことで団結するのです。
部下は上司の指示に不満や憤りを感じても、なかなか面と向かっては言いにくいものです。それは、上司の評価が自分の将来に対する決定権を持っているからです。
誰もつまらないことで上司との関係をこじらせたくはない。だから、うわべだけでも良好な関係を維持しなければと思うのです。
しかし、表面的な関係を維持するために自分の感情を無理に抑えつけているので、上司と接するときには、いつもストレスを強いられることになります。
その状態が続くと、部下は上司を「自分を不快にさせ抑圧する存在」と認識するようになります。あなたの人間性や性格が云々という以前に、上司という立場ゆえに部下に嫌われることは、ある種の必然なのです。
上司と部下の理想の関係は?
仕事で最大のパフォーマンスを発揮させるには職場の良好な人間関係は不可欠です。でも、そのためにあなたが部下の機嫌をとる必要も卑屈になる必要もありません。
必要なのは“上司と部下の視線の方向”に着目した3つの意識。これを持てるようにすることです。
1.共感
上司が会社ではなく、「自分」のビジョンを語ることです。
自分自身の目指すキャリアのゴールやそのためのアプローチなどを語り、部下のそれについても聞いてアドバイスしてあげます。
このとき上司と部下の視線は向き合っています。
2.一体感
共通の敵を作ること、そしてゴールを共有することです。「あそこの支店に負けたら絶対恥ずかしいよな」「今期は必ずウチの支店が全社トップを取ろうぜ!」というようなことです。
まさに甲子園を目指している野球部の主将のノリです。この“チーム感”は職場の一体感を作る上で実によく機能します。
このとき上司と部下の視線は同じ方向を向いています。
3.親近感
自分のダメなところをさらします。たとえば過去の失敗体験や、自分のしていた仕事のサボりかたなど。
パチンコ店の駐車場に車を停めて昼寝していたり漫画喫茶でサボっていたことなどを話します。「自分も同じようなことをしてたから気持ちはわかるよ」と伝えます。
このとき上司と部下の視線は向き合っています。
以上の3つの感覚を持てると、職場の雰囲気がガラリと変わります。
「北風と太陽」の話を思い出してください。風当たりが強すぎるとコートのボタンを閉めて、ますます心を閉ざし反対に暖かく照らしてやると自ら重いコートを脱ぐのです。
部下は褒めて伸ばすのが王道
人は期待されると実力を発揮します。これを「プライミング効果」といいます。
そしてほめられると自信がつき、ますますヤル気になります。さらには、自分を評価してくれた相手に好意的な感情を持つのです。あなた自身も経験があるのではないでしょうか。
これは「好意の返報性」と呼ばれる法則です。
これらを意識して部下の力を引き出しつつ、慕われるリーダーになりましょう。あくまでも基本はラクに「ゆるく」です。「ヌルく」ではありません。
まとめ
- 部下と向き合うこと。部下と同じ方向を向くこと
- 部下との間に「共感」「一体感」「親近感」を築く
- 叱って伸びるのは一瞬だけ。部下はほめて伸ばすのが王道
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。