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僕の周りには、しょっちゅう会社で弱音を吐く人がいます。職場全体の士気が下がるので大抵そういう人は会社からは好まれません。
皆が弱音を吐きたい気持ちを抑えてやっている中彼らはなぜ弱音を吐くのでしょうか?それは、そうすることで自分に「アメ」がもらえることを知っているからです。
一体それはどういうことでしょうか。
アメという動機づけの存在
会社で弱音を吐くことで「大丈夫か?」と周囲から注目されます。そして同僚が励ましてくれたり、話を聞いて慰めてくれたりするかもしれません。
この場合の「励まし」や「慰め」がアメになります。
ある行動をとった直後に“アメ”を与えられると、その行動は強化されます。つまり“アメ”をもらうために、またその行動をとろうという気持ちが高まるのです。
その行動を強化させないためには「スルー」することです。「注目」「同情」「慰め」そんなアメがもらえないとわかれば、会社で弱音を吐くことは激減するでしょう。
しかし、くれぐれも「うるさいよお前!」「皆頑張ってるんだぞ!」などとムチを与えてはいけません。その理由については後述します。
「アメ」と「ムチ」を使い分けるのではなく、「アメあり」か「アメなし」かを使い分ける。
これが大切です。
アメとムチの使い分けではない
仮にあなたが少年野球の監督だとしたら、バッティングのフォームが良いときにだけ「お、いいね!」とか「ナイス!」というのです。
フォームが悪いときには「全然なってないよ!」とか「この下手くそ!」というのではなく、何も言わない。ただ黙って続けさせます。
これを繰り返していると、「フォームが良いときにだけ褒めてくれるんだ」と理解して、また褒められるために良いフォームを再現しようと頑張るようになります。
ムチのもつ副作用は大きい
なぜ「アメ」と「ムチ」ではなく、「アメあり」と「アメなし」といったか。それはムチで罰を与えることには次のような大きな副作用があるからなのです。
- 行動の全体量を減らしてしまう
- 即効性はあるが持続性がない
- いき過ぎると心身ともに相手を壊す可能性がある
- 劣等感、怒り、恨みなどネガティブ感情を生む
- ムチで教育された人は自分もムチで教育するようになる
動機づけは「調教」と同じ原理
動物の調教を考えてみてください。イルカやアシカのショーでは動物が芸をした直後に、ご褒美としてイワシなどのエサを与えています。「エサ=アメ」です。
だからその“芸”という行動が強化されるのです。芸をすればまたエサがもらえると思っているから。これがいわゆる「調教」の課程です。
もし芸をしても飼育員がエサをやらなくなったとしたらどうでしょうか?それでもイルカは飼育員の合図にあわせてジャンプをし、アシカは手を振るでしょうか。多分、そんなことはないと思います。
何がアメかは行動の直後に注目!!
発達障害のお子さんをもつ、あるお母さんの話を紹介しましょう。そのお子さんには家でも暴れたり奇声を発したりする問題行動がありました。
奇声を発して暴れるたびにお母さんはわが子を抱きしめなだめていました。
奇声を発するたびに、暴れるたびに、お母さんは何度も何度も繰り返し抱きしめました。そうすることで子供に安心感を与えて一時的にでも落ち着かせようとしたのでしょう。
しかし、お母さんの思いと反対に子供の問題行動はエスカレートする一方だったそうです。
酷いときには1日50回も60回も奇声を発する。当然、近所の目もあります。困り果てたお母さんが、ある専門家に相談したところこういわれたそうです。
「今後は暴れても奇声を発しても抱きしめるな」。その代わり、「おとなしく遊んでいるときに抱きしめて」と。
お母さんが戸惑いながらもいわれたとおりにしたところ、1日60回の問題行動が1日2回になったそうです。なぜだかおわかりでしょうか?
それは、このお母さんが問題行動をしたくなるようなアメをずっと子供に与え続けていたからなんです。「僕が暴れたら抱きしめてくれる」「奇声をあげれば抱きしめてくれる」。
そんなふうに、問題行動が強化されていたのです。
行動の直後に「その行動をとる理由」が現れるはずです。
それがその本人にとってのアメです。その人にとっての「アメ」が何か。それを見つければやめさせたい行動をやめさせ、続けさせたい行動を続けさせることができるのです。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。