精神科の患者のうち割がうつだといいます。
そしてうつを発症した人のうち50%が再発するといいます。
さらに再発した人のうち70%が3度めの再発をし、3度めの再発をした人のうち90%が4度めの再発をするといわれています。
私にはうつと再発、再々発の経験があります。でも、4度目の再発はありませんでした。
90%側に入らずに済んだのは幸運でした。
では、私は何をしたから10%側に入れたのでしょうか?
うつ再発のループを断ち切るには?
はじめに結論からいいます。うつの治療には次の3本柱があります。
- 投薬
- 休養
- セルフセラピー
私の状態が良くなったのは、これら3つをすべて動員したからだと思っています。
A.投薬により急性期を脱する
脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることにより、うつになるという説が現代医学では主流の考え方です。
感情に関わる脳内の神経は主に3つの系統があります。そしてそれぞれが分泌する神経伝達物質があります。
- 興奮系:ノルアドレナリン・ドーパミン・アセチルコリン・グルタミン酸
- 抑制系:ギャバ(GABA・γアミノ酪酸)
- 調整系:セロトニン
これらの神経伝達物質のうち、セロトニンやノルアドレナリンが不足するとうつになると言われています。
だから、うつの人に対して「頑張って」「元気出せよ!」とか「気合を入れろ!」といっても物理的に神経伝達物質が不足しているので、そもそも無理な話なのです。
その神経伝達物質を補うために、投薬治療が必要になります。
病院に通い始めた頃の私は、心療内科の薬を飲むことに対して強い抵抗がありました。
初めの3ヶ月くらいは処方された薬を持ち帰って、飲まずに捨てていました。症状がつらいのにもかかわらず、です。
一度それを飲んでしまうと、自分を「うつ病患者」だと認めることになるようで怖かったのです。今よりもっと「うつ」に対する世間の理解が低かった頃ですから無理もないかもしれません。
しかし、結果的には服薬しないことで症状は悪化する一方でした。
最終的には、これまでの経緯を主治医に打ち明けて服薬を約束しました。コンプライアンスとかいうんですかね。
抵抗はあるかもしれませんが、薬の力を借りるべき段階もあります。あなたは私のようにムダに長く苦しむことは避けてください。
B.休養により生気をチャージする
- とにかく不安で仕方ない
- 常に何かに怯えている
- 落ち着かない
- 眠れない
- 極端に食欲が落ちた
- ものごとに集中できない
- 忘れっぽい
- 思考できない
- 体が重い
- 動作が緩慢
- 自分をクズだと思う
- 消えてしまいたい
体験上、こういった症状は体からのサインです。自ら休めない人を半強制的に休ませるために体が発しているサインなのです。
私も周囲に「少しゆっくりして気分転換でもしたら?」と言われましたが、どうしてもそれができませんでした。
会社を離れてもどこにいても心は仕事をしています。頭の中は常に心配ごとでいっぱいです。
「気分転換できるくらいなら、うつになったりしない」
私はそう思いました。
前述のような症状が現れたとしたら、それは本格的に倒れてしまう前に自己防御システムが働いているWARNING(警告)のサインです。
不安はあるでしょうが、体の声に従い休みましょう。結果的にはその方がダメージが軽く済みます。
それだけでは不十分
たしかに、つらい「症状」は薬で緩和したり一時的に消すことができます。
しかし、そもそも脳内の神経伝達物質のバランスが崩れた「原因」そのものは投薬では解決していません。
その原因自体は何かというと「過度のストレス」であり、そのストレスを引き起こしているのは「うつになる考え方」なのです。ここを変えていくことが根本治療になります。
薬に頼っているだけでは、うつは根本的には治らないのです。それはあくまでも対症療法にすぎません。
重要なことなので冒頭の文をもう一度繰り返します。
精神科の患者のうち3割がうつだといいます。
そしてうつを発症した人のうち50%が再発するといいます。
さらに再発した人のうち70%が3度めの再発をし、3度めの再発をした人のうち90%が4度めの再発をするといわれています。
それは対症療法だけで治った気になって「原因」を取り除いていないから。
その再発の種を取り除くために必要となるのが第3の項目です。
C.7項目のセルフセラピーによる根本治療
これは急性期を過ぎてからの段階となることを予め断っておきます。はじめる時期が早過ぎると気持ちがしんどくなり過ぎることがあります。
ここからはセルフセラピーの7項目を順番に説明します。
1.相手や環境は変えられないことを理解する
自分の力で変えられないものに執着していると苦しいだけです。相手を変えられなくても、自分が変わることは自分の意志で選べます。
復活への最短ルートは「自分が変わること」です。具体的には自分の考え方を変えることです。
2.生き方・考え方を見直す大切な機会と捉える
うつになったことを「いけないことだ」と捉える人がほとんどです。しかし、それだと自分を責めて悪循環に陥るだけです。そうではありません。
うつは今の自分の状況を見直す絶好の機会なのです。
症状が出たとしたらそれは、「今の苦しい考え方を見直してくれ!」という自分の心と体からのメッセージなのです。
3.自分の考え方を知る
自分がうつになった「原因」を作り出している考え方を知ること。これを探る過程こそが根本治療の核心です。再発したくなければ、この段階を飛ばすわけにはいきません。
うつの症状は自分のこれまでの「考え方の結果」として現れています。自分のどういう考え方がうつの原因になっているのか。それが分かったら、その考え方を変えていくアプローチに移行します。
とはいえ、これまで長年をかけて形成された考え方を直接的に変えていくのはそれほど簡単ではありません。
そこで「習慣」にアプローチをしていきます。
考え方や行動は習慣によって形成されています。ですから、習慣を変えることで考え方は変えられます。
以下に習慣を変える具体的なアプローチを示します。
4.潜在意識を書き換える
人間の心はしばしば海面に浮かぶ氷山に例えられます。
氷山全体を意識だと考えると、水面に浮かんでいる一角の部分が「顕在意識」。氷山の大部分を占めている水面下の巨大な部分が「潜在意識」です。
顕在意識は心のなかの1割程度で、潜在意識が残りの9割を占めています。そして1日の行動のうち9割は潜在意識によって支配されているといいます。
潜在意識は長い年月をかけて形成されていて、思考や行動に対して顕在意識よりはるかに大きな影響を与えます。
潜在意識の大半は幼少期の育てられ方によって形成されています。
そこで、親によって刷り込まれた自分のこれまでの潜在意識に対して意図的に新しい刷り込みをおこない、それを上書きします。そのための方法がアファメーション(肯定的自己暗示)です。
やり方はとても簡単で「大丈夫」「いいね」「自分ならできる」といった肯定的な言葉を自分に向かってかけ続けるのです。
そんなことで刷り込みができるはずがないと思いますか?初めは私もそう思っていました。
しかし言葉には力があります。言葉だけでも人を殺せるくらいに、言葉には力があります。
日本一の納税者、斎藤一人さんの本に「千回の法則」というものがあります。これは、「千回声に出した言葉は現実化する」というものです。
「大丈夫」と千回口に出すと大丈夫になり、「もうダメだ」と千回口に出すとダメになります。
現実に、1日千回溜息をつき続けると3ヶ月目には人間はうつになるそうです。
アメリカでうつ病を研究しているある心理学者は、
「うつ病になったことのない人がうつ病者の気持ちが分かるわけがない」
と考えました。
そこで彼は自らうつ病になるために、
1日1000回ため息をつくことを決めました。
それを実践して3ヶ月、
何のストレスも抱えていなかった彼は見事に(?)うつ病を発症しました。
しかし、研究のためにうつ病になったはいいものの、
うつ病の症状から何もできなくなり学会にも出てこなくなりました。
(出典:簡単にうつ病になる方法 | うつ病者のための障害年金専門ブログ)
言葉や態度に合わせて現実が変わるのです。すべての現実はイメージが作っています。かならずイメージが先にあります。
ですから、事あるごとに肯定的な言葉を自分にかけるようにします。
自己暗示に関する重要なことを覚えておいてください。実は1日の中で、肯定的な言葉を自分にかけるのに最も効果的なタイミングがあります。
それは「まどろみの時間」です。
朝の起きがけ・昼間ウトウトしている時・夜の眠りに入る前などがベストです。
このタイミングは顕在意識と潜在意識の境界があいまいであるため、潜在意識に働きかけやすいのです。そして自分からの肯定的な言葉を受け入れやすくなるのです。
5.口癖を変える
言葉は何度も口にしているうちに、考え方に影響を及ぼすようになります。ネガティブな口癖があるとネガティブな考え方をしてしまいます。
つい発してしまうネガティブな口癖をポジティブなものに置き換えましょう。こんなふうに。
- 忙しい→ま、ボチボチだな
- ヤバい→大丈夫
- ダメだ→楽勝だぜ!
しかし、いきなりは難しいと思うので、せめてネガティブな言葉が口をつきそうになったら何も言わずに口を閉じることから始めてみるといいと思います。
自分の発した言葉は耳から入り脳にインストールされます。ネガティブな言葉はその思考を想起させるだけです。
6.ものごとに対する解釈を変える
ひとつの出来事・事実に対する解釈はひと通りではありません。
言ってしまえば、うつになる人は「うつになるような解釈」を選んでしまっているのです。まずは、そのことに気づいてください。
7.減点主義ではなく加点主義で考える
とかく自分の欠点やできないことばかりに目が行きがちですが、その減点主義では自己否定のループに迷い込みます。
逆にできていることや長所に目を向けてどんどん加点していくと「自分も捨てたもんじゃない」と思えるようになります。
- 朝決まった時間に起きられたこと
- 掃除機をかけたこと
- 食器を洗ったこと
- 観葉植物に水やりをしたこと
たとえそれがどんな些細なことでも構いません。1は積み重ねれば100にも200にもなります。
いきなり10や50の行動を目指すことはありません。加点主義の考え方で日々を過ごしましょう。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願っています。