「緊張で心臓がバクバクして吐きそう…」
「滝汗が滴り落ちて止まらない」
そんな場面は誰しも一度や二度は経験したことがあるでしょう。
もちろん「緊張すること」は悪いことばかりでなく、適度な緊張は大きな成果を得るためには必要なものだともいわれます。
でも、「極度の緊張しい」で日常生活にも支障が出るようでは放っておくことはできませんよね。
「緊張なんて場数を踏めば大丈夫」だとか「慣れだよ、慣れ!」なんて気楽に言う人もいますが、実はそれは大間違い。
度合いが増すことによって「極度の緊張しい」がさらに進み、治療が必要なほどの状態になることだってあるのです。
緊張する場面でのあなたの反応はどのようなものでしょうか?
まずは、しっかりと現状を把握することからはじめる必要がありそうです。
極度の緊張しいは「あがり症」予備軍の可能性大!
緊張のレベルを以下の3段階に分けて考えてみましょう。
1.緊張
通常誰もが体験することで、動物本来が持つ「防衛本能」の一つ。
そのため脳は体全体にエネルギーを送り込み、いかなる危機が発生してもすばやく対応できるような戦闘態勢をとっているともいえます。
適度な緊張が成功に不可欠だと言われるゆえんですね。
2.極度の緊張しい
上記の「適度な緊張状態」に加えて「緊張に対する負の感情」を抱くことで、緊張している自分に意識を集中してしまい、脳が体全体に送るエネルギーを過剰に分泌しすぎて、体が拒否反応を起こしている状態。
そのため本来すばやく動き、集中力も人一倍良くなるはずの体が硬直状態になり、突発的なことにも何も反応できない危険な状態ともいえます。
3.あがり症
過去に体験した「極度の緊張」が強く頭の中に残ってしまい、トラウマとも呼べるほどのプレッシャーを感じてしまう状態。
通常なら緊張を感じないようなことにも過剰に反応し、少しでも緊張を感じるような場面を避け、日常生活にも支障を及ぼすことも。度合いがひどくなると鬱の症状に至ってしまい治療を要することにもなってしまいます。
厳密にいうと、医学的にこの判断基準はまだ曖昧な所もあるようです。
仮に、このように三段階に「緊張」のレベルを分類すると、「極度の緊張しい」は中間地点にあるとはいえ、限りなく「あがり症」に近い、危険信号が点っているような状態といえるのかもしれません。
冒頭に書いたように、誰もが「緊張する」という経験はあるし、得意不得意ももちろんあります。
人前で話すことがそれほど苦にならない人であれば、そのような緊張する場面であっても、場数を踏んだり、積極的に緊張を減らす努力をしたりすることで最初の「ド緊張」は次第にマシになっていくものです。
しかしその一方で、どれだけ場数を重ねようが、どれだけ準備をしようが、そしてどれだけいろんな努力をしようが、一向に緊張の度合いが減らない人もいます。
そういった人は逆に、緊張している自分をどんどん追い込んでしまい、「極度の緊張しい」というレッテルを自分で自分に貼ってしまっていることが多いのです。
緊張することにマイナスの感情を抱き、「極度の緊張しい」だと自分を決めつけ、緊張している自分を意識しすぎてしまうと、持ち前の実力を発揮することなど到底できない状態になってしまいます。
さらに「あがり症」に発展すると、今までに体験した「緊張する場面」での自分の「極度の緊張状態」がイメージとして頭の中に強く残ってしまいます。
その結果、まるでトラウマのように場面を想像するだけでも緊張状態に陥るようになってしまいます。
大して緊張するような場面でないにもかかわらず、過去の似たような場面と結び付けてしまい
「無理無理!自分には無理だ…」
などと拒否反応を起こしてしまうようになると、日常生活にも支障が出るようになります。
人が緊張するときの3つの原因とは?
1.不安―失敗するかもという不安
本番で失敗したくないと誰もが思うもの。
「失敗したらどうしよう…」とか「失敗するのが怖いから嫌だ」など、結果に対する不安が引き起こしているものです。
2.意識―周りの人への意識
他者の視線を感じた時、人は緊張します。
一人で車の中で鼻歌を歌っているときには平気で大声で歌えても、大観衆の前で歌を披露するなどのシチュエーションでは足がすくむような思いをするものです。
ましてその視線が否定的な評価を受けていると考えると、余計に緊張してくるものです。
3.責任感―期待されている、大きな責任を感じる
みんなに期待されている、会社の命運を左右する重要な場面など、大きな責任を強く感じれば感じるほど緊張するものです。
仲間内での打ち合わせなどでは談笑できるのに、役員の面々の前で部署のメンツをかけてプレゼンするとなれば、考えるだけで手に汗がじんわり。
1.不安を原因とする緊張の対処法
一口に不安と言っても、大きく2つに分けられます。
A:対人不安
他人の評価を気にする対人不安とは「他人からの評価を気にしつつも、人前で自分をコントロールするのが適切に行われない状態」。
例えば誰かに見られていると仕事に集中できない、たくさんの人がいるとそれだけで緊張してしまうなどがあげられます。
この不安に対処するには「無理に不安を打ち消さない」ことが重要です。
「人から良く見られたい」という意識は不安を強くします。良く見られたいと思えば思うほど、他人の評価が気になり、ますます不安になり緊張感は増すばかりです。
そしてこれを無理に打ち消そうとすると、より不安を強めてしまいます。
他人の評価を意識するあまり不安を強めるのであれば、無理に打ち消そうとはせず不安な気持ちをそのまま受け入れることが必要です。
自分が不安で緊張していることを認識し、あるがままの自分をさらけ出す「覚悟」を決めてしまうと意外とすんなりいくものです。
B:実力発揮の不安
実力が十分に発揮できるだろうか?パフォーマンスそのものが上手くいくだろうか?という不安。
スポーツ選手が試合直前に自分の技術に自信を持てなくなったり、失敗やミスのことが心配になったりというようなもの。
実力発揮の不安と上手く向き合っていく方法としては、ユーモアを取り入れることが有効です。
不安な状態で悪いイメージばかりが頭に思い浮かんでしまうようなときは、まず深呼吸。そしてゆっくりと周りを見渡します。
このときに無理やりにでも面白いものを探しちゃいましょう。
PTA総会のスピーチをするとき、悪いイメージばかりが浮かんできたら深呼吸。そして周りの先生たちをゆっくりと見渡し”魚類”にでも例えちゃいます。
サバのような先生、アンコウのような会長、ハゼのような先生。思わず噴き出しそうになればしめたものです。後は落ち着いてスピーチできるでしょう。
2.意識(自己意識)を原因とする緊張の対処法
自己意識も2つに分類されます。
A:私的自己意識
自分について考えることが多い、いつも自分の感情に注意を向けている、自分の気分の変化に敏感である。
B:公的自己意識
「他人がどう思っているか」がいつも気がかり、いつも自分の外見を気にしている、人前での自己表現にとても気を遣う。
心理学の研究では公的自己意識が高い人は緊張しやすく、逆に私的自己意識が高い人は緊張しにくいという研究結果もあります。
前述の「対人不安」にも通じることですが、公的自己意識の高い人は、周りの人からの評価に敏感になり、どう見られてるかということが気になって仕方がありません。
一方、私的自己意識が高い人は自分に意識が向かい、より自分の世界に没頭できるのです。
勝利者インタビューを受けるスポーツ選手が「無我夢中でとにかく集中できました!」などと答えるのをみかけることがあります。
あれは、私的自己意識が高まり、周りの観客の声援も聞こえず、対戦相手の様子も気にならず、自分のプレーに集中できたからだと考えられます。
このような境地は「フロー」あるいは「ゾーン」という言葉で表現されることもあります。
つまり、私的自己意識を高めれば周りのことは気にならず、あなたの最高のパフォーマンスを存分に発揮することができるといえます。
そのためには次のことに留意してください。
集中力を高めよう
フィギュアスケートの選手もテニスプレイヤーも試合前にイヤホンを耳に音楽を聞いて集中力を高めます。
もちろんリラックス効果を狙っての場合もあるでしょうが、できる限り周りからの情報を遮断し、自分のイメージの中に集中できるように音楽を使うのです。
「いまここ」の自分に目を向けよう!
公的自己意識が高まって「怒られたらどうしよう」「評価が下がったらどうしよう」などの余計な思考が頭の中に浮かんできたら、それは自分の行動よりも、他者に向いてしまっている証拠です。
そんなときはすぐに自分の行動に集中するように切り替えます。
スピーチの場合には次に話す内容を思い出す、ピアノの演奏ならリズムを崩さないようにテンポに乗るといった「今やっている行為」に意識を向けましょう。
3.責任感のプレッシャーを原因とする緊張の対処法
人は「大きな期待をかけられている」「重要な責任を負わされている」と考えると、緊張しやすくなることが分かっています。
期待や責任感がプレッシャーとなり、あなたの本来の能力が発揮できなくなってしまいます。
適度なプレッシャーは適度な緊張をもたらしますが、過度なプレッシャーは極度の緊張をもたらせてしまうのです。
そのため、責任感からのプレッシャーを「無くす」のではなく「減らす」方法について考えていきます。
自分を褒めちゃおう
周りから期待され、責任を負わされるというぐらいあなたは認められているのです。のらりくらりとやっていく人には周りも期待をかけません。
それほど自分が認められている、「こんなところまで自分は成長できたんだ♪」とポジティブにとらえるだけで気持ちは違ってきます。
完璧主義にならない
完璧な自分をあれこれ妄想し追い求めすぎると、要らぬ力が入り緊張してしまいます。
手を抜いて適当では困りますが「好い加減」という気持ちで物事に取り組むと気持ちも楽になってきます。
リラックスする
責任感の重圧を感じると精神的なことばかりでなく、身体的にも影響が出ます。
呼吸は速くなり、血圧は上がり顔は紅潮し、汗が止まらないなど。
そんなときにはまず落ち着くこと。腹式呼吸でゆっくりとリラックスします。
腹式呼吸
ゆっくりと背筋を伸ばした状態で、8秒かけて口からゆっくり息を吐き出します。このときおなかをへこますように。
②4秒で息を吸う
息を吐ききったら今度は4秒かけて鼻から息を吸います。このときおなかを膨らますように。
③4秒息を止める
④8秒で息を吐く
①~④を繰り返す
(出典:Direct Communication 「あがり改善コラム」)
面接・商談・プレゼン本番前になると、胃がキリキリ・ムカムカしてパフォーマンスどころではなくなる…。
さいごに
「極度の緊張しい」はあがり症に発展する可能性をはらんだ危うい状態だといえます。
ただ実際に自分の状態をしっかりと把握し、適切な対処法を取ることにより、十分に改善の余地はあります。
ご存知の通り、人間の心はごく一部の「顕在意識」と、果てし無い可能性を秘める「潜在意識」で成り立ってます。
そして不思議なことに「潜在意識」は考えていること、思っていること、言葉にしたことを現実のものにしようとする作用が働くのだとか。
ポジティブで明るいことを考え、言葉にするとそうなろうとするし、逆にネガティブで暗いことを考え、言葉にするとそのようになろうとします。
極度の緊張になるようなキッカケは小さなものだったはずなのに、思い込みでどんどん自分の潜在意識を誘導しているのかもしれません。
ここらで一度立ち止まって、しっかりと自分を見つめ、適度な緊張を楽しめる自分にしてみませんか?
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願っています。