暗示の力は私たちが想像している以上に強大です。
この記事では人間の思考や言葉が心のみならず、身体の健康状態にまで強い影響力を及ぼすという事実を実例を引用しながらお伝えします。
「病は気から」とか「気の持ちよう」なんていう言葉もありますが、それも同じく暗示の力が人間の心身に大きな影響を及ぼすことを説いたものです。
暗示ってそもそもなんだろう?
暗示とは催眠術のように怪しいもの不可思議なものでもありません。
私たちは日常的に自分に何らかの暗示をかけているのだ、という事実をまずは認識してほしいのです。
「暗示」は良くも悪くも非常に強い力を持ちます。悪いほうに作用すれば、人を殺すことだってあります。
この強大な力を、望ましい方向に最大限活用していくために、まず「暗示力」というものの存在を認識してほしいと思っています。ここでいう暗示とは、特に「自己暗示」を指します。
自己暗示【じこあんじ】
自分でそう思い込むことによって、それが既定の事実
であるかのような意識を生じること。
自分で自分にある観念を繰り返すことで暗示をかけ、
理性を超えた行動や力を生み出すこと。出典:三省堂「新明解四字熟語辞典」
かかりやすいマイナスの自己暗示
この自己暗示には2種類のものがあります。すなわち、「マイナスの自己暗示」と「プラスの自己暗示」の2つです。
マイナスの自己暗示は自分にとってマイナスの現実を、プラスの自己暗示はプラスの現実を引き寄せます。それならばマイナスの自己暗示をやめればいいだけでは?
・・・そのとおりです。
しかも、マイナスの自己暗示にはそれがもたらす現実とは別に、もう1つ厄介なことがあります。
それは何かというと、プラスの自己暗示は意識的に刷り込む必要があるのに対し、マイナスの自己暗示は無意識でも刷り込まれる点です。
なぜなら、放っておくとマイナス思考をするのが人間の脳の仕組みだからです。
そのため、それと気づかずに自分で自分にマイナスの自己暗示をかけてしまっていることがほとんどです。
つまり、そこに「自覚」がないことが問題なのです。
- 自覚がないから、止められない
- 自覚がないから、知らず知らずに繰り返す
- 繰り返されるから、ますます強化される
- 強化された暗示は、高確率で現実化する
マイナスの自己暗示は、たいていこの悪循環をたどります。
暗示は言葉を介して強化される
たとえば、「疲れた」という言葉を何度も繰り返していると、実際には疲れていなくても疲れてきます。
「面倒くさい」という言葉を繰り返していると、とくに面倒でないことでも面倒になってきます。
また精神科医の話では、1日1000回溜息をつき続けると3日目には健康な人間でもうつになるそうです。
ちなみに「大丈夫?何だか顔色悪いよ?」と嫌いな人に言い続けると、相手をノイローゼにできてしまいます。
くれぐれも悪用はしないでくださいね。ほんとに危険なので。
使う言葉で自分を方向づけることは誰にでも可能
マイナスの言動は無意識のうちにマイナスの自己暗示となり、心身までそちらに傾いてしまうのです。こうなると、何をしてもうまくいかないのは当然です。
これとは逆に、「まだまだ!!」と口にすると、疲れていたとしてもまだやれそうな気になってきます。
「余裕!」「楽勝!」と口にすると、ハードな局面でも案外余裕でその場を乗り切れてしまいます。
この自己暗示の力は人を病気にすることもできれば、逆に病気を治すこともできます。
サイバー心気症という新しい病
体に不調や違和感を感じたときに、その症状を検索することはありませんか?
ネットで病気に関して調べ過ぎると「サイバー心気症」と呼ばれる不調を心身にきたすことがあるといわれています。
異常心理の専門家による調査では、インターネットで病気に関する情報を調べる回数が多いほど、心気症になる傾向も高くなることがわかっています。
曖昧なことが耐えられない人はとくに注意
また、白黒はっきりつけたがる人はサイバー心気症になる可能性が高いということも知られています。つまり、自分の症状にハッキリと「病名」を欲しがる人です。
そういう人の場合、体調不良は次の過程で悪化していくことが多いようです。
- 軽い体調不良を「何の病気だろう?」とネット検索する
- その結果、自分と似た症状の病名がいくつかヒットする
- 症状が酷似していることから「もしかしたら重大な病気なのでは」と不安が募る
- 実際にはそうではなくても、そう思い続けることで症状は悪化する
たとえば、
軽い胃もたれを「この違和感は何だろう」とネット検索します。
すると、自分の症状と似た病気・病名が次々ヒットするでしょう。それらをみているうちに、「自分は何か大きな病気なのでは?」と思いはじめます。
その結果、単なる胃もたれは悪化して胃潰瘍になります。これが、暗示の力で病気になる人の典型的なパターンです。
奇跡の治療法「クエイズム」とは?
次に、フランスの有名な応用心理学者エミール・クーエによる「クエイズム」という精神療法を紹介します。
クーエは自己暗示法の創始者であり、暗示で奇跡的な治療を行った人物として世界的に有名になりました。
彼は難病患者に対し「私は毎日ますますよくなっている」という言葉を毎日毎日繰り返し唱えさせました。
痛みに苦しむ重病人には「痛みは消える、消える、消える」という言葉を毎日毎日繰り返し唱えさせました。
一見単純過ぎて子供騙しのようにも思える、クーエによるこの自己暗示療法は、実に数千人にものぼる重病人を治癒するという驚異的な効果を上げました。
まさに「奇跡」としか言いようがありません。しかし、これはフィクションなどではないのです。
潜在意識は刷り込まれたイメージを現実化しようとする
自己暗示がどのようにして潜在意識や肉体に影響を及ぼし、このような結果をもたらすかということは、残念ながらまだ明らかにはなっていません。
しかし、仕組みの解明ができていないことはそれほど大した問題ではありません。クーエの用いたこの方法が数千人にものぼる重病人を治癒したことが「事実」であり「結果」なのですから。
自らを奮い立たせるような思考・言葉が潜在意識に繰り返し刷り込まれるならば、潜在意識はその言葉が真実であると確信するようになります。
そして潜在意識が「そうありたい」と思っていることを現象として具現化するのです。
これが暗示の力で病気が治る人の典型的パターンです。
さいごに
「自己暗示」と「思い込み」と「引き寄せ」は何が違うのか?そんなことをいろいろと難しく考える必要はありません。それらは、同じひとつのことを指す別の表現です。
自己暗示について最も大切なエッセンスを厳選して最後に伝えるなら、次の2つになります。
- 自分に起きて欲しくないことは思い浮かべもしない。
- かけたい自己暗示の言葉を、反対する思考が入り込む余地がないくらいすばやく繰り返す。毎日繰り返す。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願っています。