「悪いことをしたら、ごめんなさいと謝りなさい」
そう教えられたのは幼稚園くらいでしょうか?
素直に「ごめんなさい」が言えた子どもの頃と違い、大人になるといろんな思いや、しがらみからか謝罪の言葉を濁してしまうことも。
特にビジネスでの謝罪の場面は、できることなら遭遇したくないもの。
しかし、長い社会人生活の中では大なり小なり経験することで、誰しも避けては通れないものでしょう。
それならば上手な謝罪の仕方を知ることは「状況を好転させる切り札」になるかもしれません。
ここでは、具体的な事例を挙げてビジネスシーンでの上手な謝罪の仕方を見てみましょう。
上手な謝罪の仕方には「必要なこと」と「してはいけないこと」がある
仕事上でのトラブルやクレームはできることなら耳を塞いで逃げ出したくなるものです。
しかし、起きてしまったトラブル・クレームを前に社会人が逃げ出すわけにも行きません。
対処の仕方を間違えると、さらに大きなクレームにつながることもよくあることです。
まずは知っておきたい「上手な謝罪の仕方」からお話ししましょう。
上手な謝罪に必要な5つのこと
1.スピード
謝るべき場面では1分、1秒でも早く謝らないと後々の話がこじれてしまいます。どんな原因があったにせよ、相手の頭に血が上っているときはスピード感を持って謝罪をしましょう。
もちろん、相手は怒っていますから訪問の足どりが重くなるのは分かります。
でもクレーム発生からの時間が経てば経つほど、相手は「自分は軽く扱われている」と感じ、ますます怒りがヒートアップしてしまいます。重い足を引きずってでも大至急、謝罪に向かいましょう。
謝罪において「早いこと」は正義です。
2.対面で
怒っている相手の前にはできれば出たくないもの。
ついつい頭の中に「電話で済ませようかな」とか「これくらいならメールで謝罪すればいいか」なんて考えが浮かんできがちです。
でもちょっと待って。
先ほど「スピード」の部分でも触れましたが、怒っている相手は起きてしまった出来事や現象にだけ怒りを感じているとは限りません。
こういったトラブル・クレームが起きたときほどスピーディーに駆けつけるフットワークを求める相手もいるのです。
会いに行けばきっと怒られるでしょう。でも相手の怒りの理由を知るためにも、何をさておいても真っ先に駆けつけるようにしましょう。
不思議なもので、たいていの場合、面と向かって謝っている人に永遠に怒り続けるなんてできないもの。
「まあ、対応が早かったし…」と思ってもらえれば、後の話も早いはず。
3.認める
「相手の言いなりになって譲りすぎてしまっては、その後の関係に響くかも」などと考えすぎて「簡単に非を認めないほうがいい」と判断してしまうことがあります。
でも、謝罪の場面での「計算高さ」は相手にモロに伝わります。そうすれば相手には「誠意が無い」と受け止められ、それほど大きくない問題でも二次クレームにつながる可能性もあります。
自分に非がある場合は素直に謝りましょう。今の状況を相手も決して良い状況だとは思っていません。
その後の打開策を円滑に進めるためにも、上手な謝罪が必要。まずは自分に非があることを認めることからスタートしましょう。
4.聞く
怒っている相手を目の前にし、言われることを聞き続けるということは大変な苦痛を伴います。
ついつい「ですが……」「そうは仰いますが……」などと言いたくなります。
その気持ちも分かります。
言い訳や弁解をしたくなりますが、上手な謝罪の仕方ではまず相手の怒りのボルテージが下がるまで我慢します。
前述のとおり、永遠に怒り続けられる人はいません。相手の怒りのガス抜きのつもりでじっと我慢し、チャンスのときを待ちましょう。
相手の口から「今後は二度とこんなことが無いようにしてくれよ?」などのキーワードが出てきてから、徐々にあなたの話をしていくようにしましょう。
相手は聞いて欲しいのです。
「こんなに困ってるんだ」「こんなに大変な状況なんだ」などの気持ちをぶつけるところが無いので怒っているのでしょう。
誠意を持った表情でうなずきながら「嵐が通り過ぎるのを」待ちましょう。間違ってもアクビは厳禁です。
5.心を込めて謝罪する
怒っている相手は、あなたの視線、表情、言葉、イントネーション、態度…全てを見ています。
口では「本当にすみません」と言ってはいるものの、本心は「早く終わらないかなあ、今日見たいドラマがあるのに…」なんて心の中で思っていると、それは表情や視線に出てしまいます。
謝りに来ているあなたが、不誠実な態度でいれば、相手の怒りの炎に油を注ぐようなもの。
上手な謝罪をするなら、まずは誠心誠意あなたの気持ちを込めて謝罪します。
ピンチをチャンスにする最高のきっかけにできるかもしれません。しっかりと「今、ここ」に集中しましょう。
謝罪において絶対にしてはいけない5つのこと
1.責任転嫁
相手はあなたに対して不満をぶつけているのに、あなたがのらりくらりと責任転嫁する態度は不誠実この上ありません。
誰かのせいにしたくなるのも分かりますが、上手な謝罪をするなら、逃げてはいけません。
2.反論・口ごたえ
「ですが……」「そうは言われても……」そう言いたい気持ちも分かりますが、そのセリフは噛み殺します。
「聞く」のパートでも書いたように、相手は自分の思いや考え、怒りや不満を聞いて欲しいのです。
そんなときに反論しても怒りのバロメーターは上がる一方。上手な謝罪をするなら、怒りの炎が下火になるのをじっと待ちましょう。
3.逆切れ
社会人としては言語道断の対応ですが、意外にビジネスシーンで目にする光景だったりします。
「じゃあ、一体私にどうしろって言うんですか!」なんて間違っても口にしてはいけません。
4.開き直り
「あー、はいはい分かりました。謝れば良いんでしょ!すみませんでした!」
これはもう言うまでもなく、最悪の対応です。
これをするくらいなら担当者が謝らずにコソコソ逃げ回っていたほうが、まだ会社のダメージは少なくて済みます。
会社のイメージダウンに直結。今後、そんな担当者のいる会社との取引き・付き合いは二度としたくないはずですからね。
5.謝罪のはずがお詫びの言葉がない
これも冷静に考えればあり得ない対応ですが、多くの二次クレームにつながるような問題はここにあります。
先ほどの責任転嫁にも通じますが、言い訳ばかりでお詫びの言葉を口にすることなく「処理」しようとするのです。
「あー?きちんと包装もしてるし、配送業者にも注意するように言ってるんですけどねぇ、分かりました。新しいものと交換しますね」
商品が配送され、不良品だったとき、こんな対応されたら、私でもブチ切れちゃいます。
上手な謝罪の仕方を何度も見直して、気をつけましょうね。
上手な謝罪の仕方の流れをみておこう
ここで具体的な例を挙げて、流れを見てみましょう。
言葉だけでの文章にすると薄っぺらく感じるかもしれませんが、先ほども述べたように全身全霊を総動員しての謝罪の場面を想像してみて下さい。
大切なお得意先の営業部長がお怒りの様子。納期が遅れてしまったのが原因。海外での部品調達に問題が生じたのがそもそもの原因だが、部長にとっては一日も早く対応して欲しいとご立腹です。
1.まずお詫びの言葉で謝罪する
〇上手な謝罪の仕方
いつも可愛がってくれる○○様のご恩に泥を塗るようなことをしてしまい、私個人としましても本当に申し訳なく、なおかつ悔しくもあります。本当にすみませんでした
×マズい謝罪の仕方
あっ、それはもうすぐに納品させますんで……
きちっとしたお詫びの言葉を心を込めて謝罪することが大切です。いきなり言い訳や都合を聞かされても、相手にとっては面白くありませんし、怒りが収まりません。
2.具体的な対応を説明
〇上手な謝罪の仕方
つきましては正確な納品日については後ほど△△(弊社の部長)がお邪魔させていただきますので午後からお時間いただけますでしょうか?
×マズい謝罪の仕方
はっきりしたことは言えませんね……
歯切れの悪い言葉で、ぬるい対応をされるとぞんざいな扱いを受けていると感じるものです。
怒っている側からすると一刻も早く、会社をあげての対応を望んでいるのです。
こういう場合に上司に登場してもらい「全社一丸となっての対応」というアピールをすることは非常に効果があります。
3.相手の感情を思いやる言葉
〇上手な謝罪の仕方
御社の取引先への影響はいかがでしょうか?もし○○部長にご迷惑をおかけしているようなら、私が出向き、事情を説明し、責任は弊社にあることを申し上げて参ります
×マズい謝罪の仕方
一日も早く納品しますので。ホントすみませんね。
ビジネスシーンにおいては、相手の立場、相手の取引状況など細かく絡んでくるものです。
相手を思いやり、言葉にすることで「謝罪」というピンチの場面で「誠意のある」とか「相手の気持ちが分かる」などの好印象を与えることにつながるチャンスに変えることができるかもしれません。
4.最後にもう一度お詫びの言葉で謝罪の気持ちを伝える
〇上手な謝罪の仕方
後ほど△△ともう一度お伺いさせていただきお詫びさせていただきます。本当にすみませんでした
×マズい謝罪の仕方
どうもすみませんでした!
最後の最後にもう一度しっかりと謝意を伝えることが重要です。
ここまできてようやく相手の怒りが収まり今後の関係をと思った矢先に、最後の謝罪をしっかりとしないことで相手に悪い印象で終わってしまっては、今までの苦労が水の泡と消えてしまいます。
最後までしっかりと謝罪の気持ちを伝え、相手の気持ちをやわらげる努力を怠ってはいけません。
まとめ
「ピンチをチャンスに変える」などとよく言いますが、クレームや問題が起きたときこそ、担当者であるあなたの人間性が試されるときです。
最後に少しだけ私の失敗談を。
まだ私が新人に毛が生えたような頃、先輩がクレームに対応するのを目の当たりにし、あまりにもフランクに「いやぁ○○さん、すみませんでした。
こんなこと二度とないようにしますから、許してくださいよぉ」という感じでいとも簡単に相手の怒りを静めてしまいました。
素直な私は「あー、あんな感じで良いんだぁ」と上手な謝罪の仕方を間違って覚えてしまいます。
しばらくして似たような状況で私がお客様の対応をすることに。
そこで私は想像通り、なめた口調でニヤ付いて「あの先輩のように」クレームを処理しようとしました。
するとお客様は大激怒。どうしたら良いか分からない私は呆然としていました。
若かりし頃の失敗と言えばそれまでですが、今なら激怒したお客様の気持ちも分かります。
先輩のようにある程度の人間関係を築き上げているのならまだしも、右も左も分からないヒヨっこが偉そうにニヤ付いて対応されたら怒りますよね。
あなたにはこんな失敗をしないよう、「上手な謝罪の仕方」をしっかりと身につけて、ビジネスにおける強力な武器を手に入れて欲しいと思います。