五月病という言葉がいつからあるのかは知りませんが、ゴールデンウイーク最終日は明日からの仕事を思って憂うつになっている人がほとんどでしょう。
程度の差はあれ、連休の最終日や連休明けに憂うつな気分になるのは当然の心理といえます。
ただ、問題なのは、その心理状態を「五月病」という名前でラベリングすることです。
そしてそれにより、「ああ、自分のこの憂うつ感は病気なのかな…」と思ってしまうことです。
五月病と呼ばれるものの正体
一般的に、大学の新入生や新社会人、あるいは転勤や異動により新しい環境に変わった人に五月の連休明けにみられる、抑うつ的な精神的状態を指して「五月病」と総称します。
また、新人研修が終わり現場に配属になった6月にこうした状態に陥る場合を特に6月病と呼ぶこともあるようです。
つまり、
- 新年度に大学入学や就職、異動・転勤などで環境に大きな変化があり
- その変化や新しい環境に適応できない状態が続くと
- 人によってはうつ病にも似た症状をきたすことがある
ということなんです。
その時期として多いのが五月の連休明け頃であるため、五月病という俗称で呼ばれているんですね。
しかし「五月病」という名前の疾患があるわけではありません。
五月病を疑った状態で心療内科を受診するとおそらく、「適応障害」とか「抑うつ状態」「うつ病」という診断名がつくでしょう。
それは病気だからというより、医者が患者予備軍をそのまま帰らせることはなくリピート客として通院させるために、診断名を与える仕組みにしているから。
見込み客を患者化するということは、心療内科医にとって大事な仕事なのです。医者も奉仕ではなくビジネスとして診察をしているからです。
極論ですが、もし、この世からうつ病の患者がいなくなったら誰が困りますか?逆に、この世がうつ病の患者だらけになったら誰が喜ぶでしょうか?
「心の病気は大半作り出されている」という側面もあります。
では、病気でなければこの憂うつな状態は一体何なのでしょうか?
結論からいうと、それは病気ではなくただの「気分」や「心理状態」です。
五月病という心理に陥る原因
基本的に人間は変化を嫌う生き物です。
それは「ホメオスタシス」と呼ばれる恒常性維持機能によるものであり、怠惰とか怠慢という性格の問題ではなく、生物の本能なのです。
また、自分にとって快適な状態のことを「コンフォートゾーン」と呼びます。
【コンフォートゾーンの例】
- 自分にとってちょうど良い人間関係
- 自分にとってちょうど良い仕事のスピード
- 自分にとってちょうど良い忙しさ
- 自分にとってちょうど良い情報量
- 自分にとってちょうど良いプレッシャー
新しい環境に適応するためにはそれまでのコンフォートゾーンから出る必要があります。しかし、それには相当大きな心理的ストレスが伴うことになります。
もともと変化を嫌う生き物である人間が、それまでの心地良い居場所を追われて別の環境に追いやられるわけです。苦もなく新しい環境に馴染めるほうが特殊だと言わざるを得ません。
環境の変化と憂うつな感情
五月の連休といえば、新しい環境に変わってからちょうど1ヶ月経った頃です。環境の変化とは、新社会人の場合には次のようなのものがあげられます。
- 場所や環境などの物理的な変化
- すべてがゼロからの新しい人間関係
- 時間に対するスピード感覚の変化
- 仕事に対する責任を負うプレッシャー
- 慣れない敬語に気を遣う生活
- 大学の最上級生から社会では一番下っ端になる
- 新しく覚えることが大量にある
- 自分の時間がなくなる
- 毎日が同じことの繰り返し
- 入社前の想像と実際のギャップにやられる
- 将来に夢が持てない閉塞感
それでも1か月間、とにかくがむしゃらに頑張ってきて入社以来初めて迎える長期連休がこの五月のゴールデンウィークです。
日々、忙しさと疲労のために振り返る余裕のなかった我が身をふと振り返ると…
「自分は一体、何のために毎日こんなことをやっているんだろう」
「こんなことをやるために、自分は勉強して大学を卒業したのか」
「自分のアイデンティティって何だろう」
という虚無感が押し寄せてくることもあるでしょう。
- 入社からひと月でたまった疲れが一気に出る
- 1か月間の無理や我慢、ストレスが爆発する
- この先の社会人生活を思うとドッと疲れる
- 会社には戻りたくないと思う
- でも他の選択肢もない
新しく環境が変わってからの初めての「休憩ポイント」なので、冷静になっていろんなことを思ったり自問したりするはずです。環境が変わって何も悩んだりしないというほうが珍しいでしょう。
「もうあんな会社には行きたくない」
「仕事を辞めたい」
そう思う人も多いでしょう。
私もそうでしたし、何度も後輩の新入社員を見てきて感じることです。
そして同時に、ここは1つのターニングポイントでもあるのです。
大切なことは「五月病じゃないだろうか?」とか「心療内科に行くべきじゃないか?」というふうに病気と決めつけるのではなく、現状を見つめ直す機会と捉えて自分の心と向き合うことです。
大丈夫。あなただけではありませんよ。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願っています。