同じ職場の同じ部署で働いている2人。
AさんにはストレスにならないことがBさんにはストレスになる。
また逆に、Aさんには大きなストレスになることがBさんにはまったくストレスにならない。
そういったことは実際によくあります。
あるひとつの出来事に対するもののとらえ方はみんな同じではなく、「何」に対してストレスを感じるかは個人によって違うのです。
感情の個別性
ある事象を見聞きしたり体験したときに、それをどのように感じるかには個人差があります。
10人が同じことを経験すればそれに対するとらえ方は10通りあり、まったく同じものはあり得ません。
それはこれまでの経験や知識、価値観といった個人のフィルターを通してその経験にそれぞれの意味を与えているからです。
認知という個別のフィルター
この場合の個人のフィルターを「認知」といいます。
認知(にんち)
外界にある対象を知覚し、経験や知識、記憶、
形成された概念に基づいた思考、考察・推理などに基づいて
それを解釈する、知る、理解する、または知識を得る心理過程。出典:Wikipedia
ストレスを抱えやすい人はこの「認知」に歪みが生じている可能性があります。
認知の歪みには以下の10種類のものがあります。あなたにも当てはまるものがないか確認してみてください。
1.全か無か思考
ものごとを「白か黒か」の2分割思考でしか考えられない極端な完璧主義の思考パターンです。
世の中のほとんどの問題は白でも黒でもなく、それらの中間にあるものなので、このように考えると自分も他人も認められなくなってしまいます。
書類にほんの1ヵ所ミスが見つかっただけで「全部ダメだ」とか解けない問題が1問あると「全然分からない」と思ってしまうなど。
2.一般化のしすぎ
なにか1つ良くない出来事があると「いつも決まってこうだ」とか「うまくいったためしがない」などと考える思考パターンです。
初めて秘書課の女性を食事に誘って断られたときに「俺はいつもこうだ。食事に誘うと必ず断られる」と思うとか、「自分は初対面の人とは絶対に上手くしゃべれない」と思うなど。
「いつも」「すべて」「絶対」という言葉を含むのが特徴です。
3.心のフィルター
1つの良くないことにこだわってクヨクヨ考え、他の良いことはすべて遮断してしまう思考パターンです。
1つ良くないことがあると「人生で良いことなんて何もなかった」というようなタイプ。
たとえ99人に絶賛されたとしてもたった1人にでも批判されると、そちらが気になりクヨクヨいつまでも思い悩む人がこのタイプです。
4.マイナス化思考
良いことを遮断するだけでなく、何でもないことや良いことを悪いことにすり替えてしまう思考パターンがこれです。
仕事がうまくいったときには「これは何かの間違いだ」と思い、上手くいかないときには「これが実力だ」と自分を卑下するなど。
5.結論への飛躍
明確な根拠もないのに悲観的な結論に飛躍してしまう思考パターンです。これには「心の読みすぎ」と「先読みの誤り」があります。
心の読みすぎ
断片的な言動から相手がどう思っているかを決めつけてしまうこと。
それが正しいかどうかを確かめようとしないので、相手の本当の思いを知るまではその思考に振り回されることになります。
「久しぶりに昼飯に誘ったのに断るなんて、主任は自分のことを嫌っているに違いない」など。
先読みの誤り
誰にも分らないような未来のことを決めつけてしまうことです。
「自分はこの先生きていてもロクなことがない」など。
6.拡大解釈と過小評価
自分の失敗や欠点を実際以上に大きくとらえ、自分の成功や長所を極端に小さくとらえる思考パターンです。
他人に対してはこの逆の思考パターンをします。
自分のミスには「オレは能なしだよ」とひどく落ち込むクセに、他人のミスは「そんなの大したことないよ!」と元気づけたりします。
7.感情的決め付け
自分の感情を根拠に現実の評価を決めつける思考パターンです。
「ヤバい。めちゃめちゃ緊張している。オレにできるわけがない」
「失礼なヤツだな!あんなヤツにロクな仕事はできないだろう」
など。
8.すべき思考
何かをする時に「~すべき]「~すべきでない」と考えてしまう、基準に沿うことが当然であるとする思考パターンです。
「成功したければ人が遊んでいるときにも働くべき」
「受験生なら寝る間も惜しんで勉強するべき」など。
9.レッテル貼り
自分や他人に対してネガティブなイメージをつくり上げて、ラベル化することでそのイメージを固定してしまう思考パターン。
仕事で成果を出せなかったときに「俺は給料泥棒だ」と思ったり、出世争いで同期に負けたとき「自分は負け犬だ」と思ったりします。
10.自己関連づけ
自分に何の責任もないようなことまで自分のせいだと思ったり、必要以上に自分に責任があると考える思考パターンです。
「今日の試合に負けたのは全部俺一人の責任だ」
「今回のイベントが失敗したのは全部自分の責任だ」など。
この逆パターンを責任転嫁といいます。
さいごに
以上10コの思考の歪みのパターンを紹介しました。あなたはいくつ当てはまりましたか?
多かれ少なかれ、こういった部分は誰でも持っているものです。「当てはまり過ぎだろ」という人もヘコむ必要はまったくありません。
「感情がニュートラルに戻らない」
「何かイライラする」
そんなときには今一度、自分の認知に歪みがないかどうかをチェックしてみてください。
そのときに、今回お伝えした「認知の歪み10」の内容を活用すれば、思考のバグの在りかを見つけやすくなるはずです。
何かうまくいかないときに自分の思考の偏りをチェックするモノサシとして使ってみてください。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願っています。