喜怒哀楽といわれるように「怒り」は人間を人間たらしめる感情の一つであるとともに、最も強いパワーを持つ感情です。
ですが、この感情が暴走してしまうと相手も自分をも破壊しかねません。
そこで、今回はイライラのコントロール方法をご紹介します。
イライラと怒りの違いについて
イライラは内面の感情がまだ言動として表には出ておらず、自分の内部にマグマのように溜まっている状態です。そして怒りは、そのマグマが外に噴出した状態です。
こう書くと、怒りよりイライラのほうがまだマシだというイメージを持たれるかもしれません。しかし、必ずしもそうではありません。
怒りが一時の爆発なのに対し、イライラは長い期間継続します。時間とともにおさまるどころか増幅していく傾向があります。
そしてイライラは周囲にも伝染し、自分を取り巻く環境と状況を悪化させ、さらに悪い出来事を引き寄せます。どこかで断ち切らなければ、このスパイラルは繰り返されます。
なぜイライラや怒りはよくないのか
これに関しては改めて説明の必要はないかもしれませんが、今一度「デメリットしかない」という事実を確認しておきます。
1.自分を取り巻く環境が険悪になる
怒りは相手との関係に支障をきたすのはもちろんのこと、自分と相手を取り巻く人たちにも影響を与えます。「コイツとはどうなっても構うもんか!」と怒りにまかせて思い切り相手を罵ったら、周囲がドン引きすることもあります。
「あんなことでそこまで怒る人とは思わなかった」というふうに周囲の見る目や接し方がこれまでと変わったり、敬遠されたり。
どちらにせよ、イメージアップすることはありません。
2.血圧が上がる
都市伝説でも何でもなく、怒ることで血圧は上がります。生物は興奮状態になると血流と心拍数を上昇させるようにできています。
野生動物でいえば、獲物を見つけたときや天敵に出会ったときの「闘争か逃走か」という状況が興奮状態です。
この状況では速やかに動けるように血流と心拍数が高まります。このメカニズムは人間でも同じなのです。
そして急激な血圧上昇は、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めることにつながります。とくに高血圧の人の場合は、上昇の値も大きくなりがちだとか。
怒りで寿命を縮めるなんてバカらしいですよね。
3.エネルギーと時間のムダ遣い
車が渋滞に巻き込まれたからといってハンドルを叩いてみても目的地に早く着くわけではありません。
エレベーターのボタンを連打したからといって早く来るわけではありません。
いつもより1本遅れた電車の中で駆け足をしても電車の速度が上がるわけではありません。
それより、その待ち時間で生産的な思考をした方が有益なことはいうまでもありません。
イライラや怒りが湧いたときの対処法
1.怒りの反射神経を鈍くする
こう書きましたが「反射神経」という名称の神経は存在しません。「反射」という現象があるだけです。動物の生理作用のうち、特定の刺激に対する反応として意識されることなく起こるものを指して「反射」と呼びます。
「反射神経を鈍くする=反射のスピードを遅くする」と考えてください。要するに「怒りに鈍くなろう」ということです。
イライラが発生するのは脳内の“大脳辺縁系”という部位で、思考判断を司るのは“大脳皮質”と呼ばれる部位です。重要なのは、両者の情報伝達速度にタイムラグがあるということ。
この時間差と鈍くなる必要性については、こちらの記事で解説しています。
2.怒り散らす前にトイレに行く
目的は用を足すことではなく、スマホで画像をみることです。事前に「クールダウン用画像」を用意しておきます。刺激に慣れると効果がなくなることもあるので複数のものを。
最も効果的なクールダウン画像とは次のようなものです。
- どうしても笑わずにはいられないおバカ画像(Twitterのタイムラインにもよく流れてきますが)
- 子犬やウサギなど愛くるしい動物の画像
トイレでこれを見てから現場に戻ると、怒りテンションが前より下がっているはずです。
参考記事はこちら。
https://any-stress.com/archives/13678
3.相手を人間ではなく犬だと思う
私は上司が単なる見せしめでまくし立てている、聞く必要のない話は「よく吠えるワンちゃんだなー」と思いながら聞き流しています。
本当にビックリするほど話を聞いていません。
犬の言葉を理解しようとしなくていいし、吠え疲れたら犬も黙ります。相手を人間だと思うから余計に腹が立つんですね。
「日本語が喋れる犬なんて初めてみた!」くらいに思っていればいい。
私はこの「お犬様作戦」を異常レベルのクレーマーに対しても使います。言いたいことを全部吐き出すと、彼らはスッキリして帰っていきます。
後日お会いすると、「あの時は言い過ぎて悪かったね」とその後の関係は逆に良くなったりするので不思議です。
4.目線を上げることで思考を強制終了する
これは「ある1つの思考」に囚われた時、その感情を断ち切るのに有効な方法です。
この方法についての詳細はこちらの記事をお読みください。
https://stressfree.tokyo/archives/204
松井秀喜選手に学ぶ不動心
「怒り」や「イライラ」について書かれた本を何冊か読んでいると高い確率で、元メジャーリーガー松井秀喜選手に関するエピソードが登場することに気づきます。
松井選手は良いときも悪いときもメディアへの対応がよく、その紳士的な態度は多くの賞賛を集めています。メディアの質問の中には、感情を逆なですることが目的であるようなものもしばしばあります。
たとえば、松井選手は打てなかったときの気持ちを自身の著書『不動心』の中で次のように語っています。イライラや怒りを表に出すのか、昇華するのかは選べるのです。
悔しさは胸にしまっておきます。そうしないと、次も失敗する可能性が高くなってしまうからです。コントロールできない過去よりも、変えていける未来にかけます。
腹が立ったり、不満が出てきたりするのは仕方がありません。思ってしまうのだから自分にも止められない。でも、口に出すか出さないかは自分で決められます。そこに一線を画したほうが、自分をコントロールできる気がします。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願っています。