優秀な営業マンは、人間の心理を熟知しています。どうすれば相手との会話の主導権を握れるか。
自分の望む方向に話題を発展させることができるか。そういったことを経験的に知っているようです。
前提条件を暗示するトーク
そんな営業マンが使うテクニックの一つに「前提条件を暗示する」という方法があります。
たとえば、店頭で鍋やフライパンなどのキッチン用品を売る場合ストレートに「今日は何をお探しですか」とお客さんに聞いたのでは「いや別に」「要りませんから」と断られてしまうのがオチでしょう。
選択肢を示して質問する
こういう場合には「奥様がよく作るのは炒めものですか?それとも煮込み料理ですか?」と具体的な選択肢を提示して質問するのが良い手です。
そう聞かれると、聞かれた方は「どっちが多いかな?」と考えることになります。
そこで「炒めものが多いわね」となれば「それなら、このフライパンがいいですよ」と勧めるのです。
買う前提で話す
つまり、キッチン用品を買うか買わないかは一切聞かないで、キッチン用品を買うことがすでに“前提条件”になっているかのように話を進めていくということです。
商品単価は関係なし
このやり方はもちろんキッチン用品以外でも使えます。たとえば、商品単価の高いクルマの販売でも応用できる方法です。
まず、展示場に来たお客さんを「買う」と決めてかかるのです。実際、いつか買うことには変わりないのですから。
具体的な質問をする
その上で「長距離の移動と近所のちょっと乗りではどっちが多いですか?」あるいは「ご家族での移動は5人乗りで十分ですか?それとも7人乗りが必要ですか?」と具体的な選択肢を示して質問します。
次第に同心円を狭める
その後は、お客さんの答えによって選択肢を狭めていく作業をするわけです。
「長距離移動が多いようなら、コンパクト過ぎる車だと疲れますよね」「7人家族ならセダン系ではなく、1BOX系ですかね」というふうにです。
前提条件をつくることで、相手に「買わなければならない」という錯覚を起こさせるのです。
裏付け実験
こうした人間の心理は、次の実験でも明らかにされています。被験者に「時計と他のものが一緒に写っている写真」を見てもらい何分か経ってから、写真に写っていた時計の時刻を質問します。
このとき「何時でしたか」と聞くと「10時」と正確な時刻を答える人が多いという結果が出ました。
選択肢を提示すると
ところが「時計が指していたのは2時でしたか8時でしたか」と聞くと、実際は10時を指していたにもかかわらず「2時」とか「8時」と答える人が多いという結果が出ました。
漠然と「何時でしたか」と聞けば正確に答えられる人でも、選択肢を前もって提示されると、それが間違いであっても選択肢のうちどちらか一方を選んでしまうのです。
心理操作される
選択肢を提示されると、その時点で人間の思考の幅は非常に狭くなります。
「正しいか間違っているか」ではなく、「どちらかを選ばなければならない」という方向に心理が働くためです。
実際に試してみる
そのため、大前提となる「買う・買わない」という話を飛ばし、具体的な選択肢を提示すると、相手の気持を自分の望む方向に誘導することも可能になるのです。
今回の内容は様々な業種で今すぐにでも使えるものです。あなたも是非試してみてください。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。