ひとことで営業といっても、その形態から大きく2つのタイプに分かれます。既存顧客訪問の「ルート営業」と新規開拓のための「飛び込み訪問」です。
多くの場合、既に知っているおなじみの顧客を訪問するほうが気楽です。顧客でもなく、面識すらない相手に会いに行くほうが緊張するものです。
この記事では、後者の攻略法について8つのステップで解説していきます。
はじめに
ビジネスの世界では「MBAホルダー」の肩書がモノをいうことがあります。
MBA(エムビーエー)
経営学修士の修士課程の修了者に与えられる学位。MBAの上の学位としてDBA(経営学博士)がある。欧米でビジネススクールと呼ばれる経営学の大学院で取得できる。学位取得の目的は「経営者・ビジネスリーダーとしてのスキルを身につけること」。理論的な内容から、より実践的なマネージメント法まで、経営に関わるノウハウを学べる。
実際、アメリカ企業のトップマネージメントの学歴を見てみると、MBA取得者が大半を占めている。ただ、現在日本で取得できる大学院は少なく、欧米の大学院に留学するのが一般的。
出典|ASCII.jpデジタル用語辞典
なぜ、冒頭でMBAに触れたのか?それは「営業」のスキルはMBAホルダーですら持っていない特殊技能であることを認識して欲しいからです。
さらには、営業職にプライドを持ってほしいと思うからです。
現実に、営業を教えるMBAプログラムはほとんど存在しません。なぜなら、営業の本質は現場に身を置かなければ学ぶことができず、ビジネススクール型の教育には向いていないからです。そのため、MBAのエリートが死ぬほど恐れる仕事が「営業」だといいます。
では、次章からその特殊技能の授業に入りましょう。
営業の8つのステップ
ビジネスにおいて「受注」を直接的に発生させるのは営業の力です。
インバウンドマーケティングが定着し、企業のWebページから受注する機会も増え、現在は飛び込みというプッシュ型営業をさせる会社は少なくなりました。
しかし時代が変わっても、対面営業の機会が「無くなる」ことはまずないでしょう。
新規開拓の場合は「訪問」からはじまって「契約」で終了になりますが、そこに至るまでには踏まなければならない8つのステップがあります。それぞれ、【Bad】と【Good】の事例を対比させて解説していきます。
面接を売る
お客さんに話を聞いてもらうことを「面接を売る」といいます。
【Bad】
- 態度が落ち着かない、声が小さい、表情が硬い
- 一番いけないのは相手に喋らせること
この段階で相手が口を開けば断りの文句が出てきます。商談には相手に喋らせていい場面といけない場面があり、この面接を売る段階では相手に喋らせてはいけないのです。
【Good】
-
- 第一声は大きな声で“自信”を全面に打ち出すこと。
- 立ち上がりの段階ではしっかり声を出し自分をコントロールすること
- 自分自身をコントロールできなければ相手をコントロールできない
- 相手に断りの言葉を言わせないよう、こちらが一方的に話す
- 質問する場合も断りの言葉が返ってこないような話題を拾う
用件の切り出し
次はいよいよ、お客さんに訪問の目的を告げる段階です。訪問される側の心理として、相手が何をしに来たのか分からないというほど不気味なことはありません。
【Bad】
- 断られないように差し障りのない話(天気や景気)を延々と続ける
そうすると相手はだんだん不安になり心を閉ざしてしまいます。
こうなると、もはや次のステップへは進めないでしょう。
【Good】
-
- あいまいな言い方をせず、訪問の目的をズバッと告げる
ここで断られるのを怖れて自ら道を閉ざしてはいけません。それができるかできないかが「勝負の分かれ道」といっても良いでしょう。
3.最初の断り
まず、断られるのがデフォルトだと思って間違いありません。ここでの対応のしかたは反論するかしないかの二択となります。「断られたらどうしよう」ではなく、必ず断られます(笑)
【Bad】
- 「でも」「しかし」と必死にお客さんに反論する
たとえそれが正論だとしても、相手の気分を害するだけです。この段階で相手と討論をしては絶対にいけません。討論で勝っても商売で負けては意味がないのです。
【Good】
-
- お客さんに現状の満足点を引き出す質問をする
「現状の満足点=断る理由」なのでお客さんも喋りやすいのです。この段階では、お客さんにできるだけ喋らせるようにします。
買わない理由を質問すれば相手は何か喋ってくれるはずなので、そこを突破口にしていきます。
4.二度目の断り
一見スムーズに会話が弾んでいるように思えても、お客さんは断る理由を話しているに過ぎません。
話の流れに乗せられて喋らされたことに気づいたとき、お客さんはハッと我に返ってあなたにこう言います。「だけど、要りませんから!」
“営業は断られた時からはじまる”の格言通り、ここからが営業の真髄です。
【Bad】
- 「相手の意志は固い。やっぱりダメだ」と諦めて逃げ帰る
【Good】
-
- 平然と受け止めて、話題を世間話に切り替える
この時の注意点は、相手が同意できるような話題を投げることです。人間の心理として「イエス」と口にする度に心が開いていきます。
ここでは自分の意見はいわず、事実のみを投げかけるようにします。この話術は「イエスセット話法」と呼ばれます
5.本題に戻す
世間話でお客さんの心が開いてきた頃合いを見て本題に戻します。ここが、次のステップ6へつなぐ移行段階ですのでじっくりと。一足飛びにここを飛び越えるとまず売れません。
【Bad】
- いきなり本題に戻す
「なんだ。やっぱり売りたいだけなのか」とせっかく開きかけた相手の心を閉ざしてしまうことになります。こうなると、こちらに対する警戒心はより強くなってしまいます。
【Good】
-
- 売り気を出さず、じわじわと相手の問題意識を引き出す
そして、その問題意識を強調させます。仮に費用が問題ならば、「1年で◯万円、5年で◯◯万円の節約になります」とかけ算をしたり逆に「1日あたりわずか◯円の差にもなりません」とわり算をします。
会話の中で、かけ算とわり算を使い分けると説得力が増します。
本題
本題への誘導に成功したら、いよいよ本題を展開します。
【Bad】
- 自分の考えや都合のいいことを中心に展開する
この段階では営業が自分の意見や考えを述べるべきではありません。
【Good】
-
- 客観的な資料や情報を提示しながら話を進めていく
- お客さんの知りたいことのみを中心に話を展開する
つまり、お客さんが知りたがっていない予備知識は喋らないこと。
- 沈黙には沈黙を
自信のない営業マンほど、断られる不安からよく喋るもの。お客さんが黙ったときは自分も黙るのが上級者の技術です。営業の世界では「美しく黙る」ということが言われています。
ためらい
あと一歩で契約という段階になると、急に態度を一変させてそれまで話題にすらなっていなかったことを突然言い出す相手は多いものです。
【Bad】
- この不意打ちに対してムキになって反論する
すると挙句の果ては「値引き」等販売条件を売るしかなくなります。
【Good】
-
- 「~とおっしゃいますと?」とオウム返しで相手の本音を探る
相手の言っていることの真意を掴むためにそのまま聞き返してみます。もしかすると、本当は話を聞いてほしいだけかもしれないのです。
締結(クロージング)
【Bad】
- 「検討しておいてください」とお客さんの決心を気長に待つ
いったん熱が冷めてしまうと、そのまま火が消えることもよくあります。ここでは一気に攻め込まないといけません。
【Good】
-
- 相手が迷っていても、買うと決めてかかる
文章では強引に見えるかもしれませんが、これは絶対に必要です。
「ではさっそく手続きをさせてください」と必要な書類を準備し始めるのもいいでしょう。
- 選択肢を提案して決断を迫る
「お支払は、ローンと現金一括のどちらになさいますか」「色は白と黒のどちらになさいますか」と選択肢を提示して相手に主体的に選ばせます。
ポイントは、このようにどちらを選んでも「買う」という前提が変わらないような選択肢を提示することです。これはダブルバインド(二重拘束)という心理効果を狙っています。
- 損失に対する恐怖心を煽る
「キャンペーン中で今がお買い得」という事実を強調するよりも「限定品なのでラスト2個しかありません」と損失に対する恐怖心を煽ったほうが、決断のスピードが圧倒的に早いのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
訪問から契約までには例外なく、この8ステップがあります。
- 面接を売る
- 用件の切り出し
- 最初の断り
- 二度目の断り
- 本題に戻す
- 本題
- ためらい
- 締結(クロージング)
新規開拓の際は、初回訪問の時にステップ4まで完了しておき、2回目の訪問ではステップ6まで完了し、3回目の訪問では決める。そのようなペース配分も考えてみてくださいね。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。