先日、一緒に食事にいった後輩がこんなことを言っていました。
「大学院を出て研究所に就職して2年目なのに、やってるのはデータの入力や先輩の弁当や飲み物の買い出しなどの雑用ばかり。」
「肝心の研究をさせてもらえないのでもうやめたい」
「先輩も変な癖のあるオタクばかりだし。自分の理想の職場環境をみつけるにはどうしたら良いですかねぇ?…転職っすか?」
こんなことがしたくて就職した訳じゃない
彼は「自分はデータ入力と弁当の買い出しをするために、大学院を出て研究所に入ったわけじゃない」というのです。
もちろんそれはそうでしょうが、私だったらデータ入力や弁当の買い出しを嫌がるような後輩には他のことも任せられないと思ってしまいます。
ましてや、そういう人に重要な研究など任せられません。
望んだ仕事に就いたとしても最初からやりがいや責任のある仕事を与えられたりするわけではありません。当然、任される仕事の重要度は段階的に上がるものです。
上司や先輩が部下に仕事を振るときに、その仕事が気に入るかどうかなんて聞くことは普通あり得ません。そんなことは頭が良い彼なら分かりそうなことなのですが。
望んだ職場でもコントロールできない要素だらけ
世の中に、希望通りの職業に就いている人がどれくらいいるでしょうか。
希望通りの職業に就くことができた一握りの幸運な人たちは仕事上のストレスなどないと思いますか?そんなことはありません。
自分でコントロールできないことだらけでやはりストレスは抱えています。
自ら望んだ寿司職人の道
別の後輩は寿司職人として自分の店を持つために修行中です。
一人前の寿司職人になる難しさを表す言葉に「飯炊き三年握り八年」というものがあります。職人になるには 一般的に「下積み」という期間があります。
この下積み中には、技術的な事は教えられないそうです。
最初の1~2年はいわゆる下働き、2~5年目は裏方の作業を覚え、6年目頃からカウンターで寿司を握ることが許されるようになり、10年目くらいで店の2番手になって指導的立場になるそうです。
これは、一般的な会社員の成長スピードとして考えてみても妥当なところではないでしょうか。
よしもと芸人のマネージャーに!
また、私には「よしもと芸人のマネージャーになりたい!」という友人がいます。
運よく彼がその職業に就けたとしても、そこにも当然のように人間関係はあります。
またマネージャーになったからといって、どの芸人の担当になるかは分かりません。いくらやりたかった仕事とはいえ、会社から決められた自分の担当芸人とそりが合わないことだってあるでしょう。
また、その芸人とやっと信頼関係ができてきた頃には会社の方針で突然別の芸人の担当になってしまったり、あるいは別の部署へ異動になることもあるかもしれません。
自分のやりたい仕事に就いたとしても、職場環境や人間関係が全部自分の思い通りになっている人なんているのでしょうか?
自分のコントロール下に置けない要素もたくさんあるのです。
「人につかわれるのが嫌だから」と個人で会社を興したり、フリーランスになったとしてもやはり難しい部分はあるでしょう。
「転職」という解決法は最終手段
不満の解決策として転職を考える人もいることでしょう。それを否定するつもりは毛頭ありません。
でも、どこの職場でも新人がいきなり重要度の高い仕事は任されたりしないし、やりがいのある仕事を任されるとは限りません。
たとえ即戦力といわれる中途採用の人であっても然りです。
やはり扱う仕事には「順序」というものがあるのです。
また人間関係を理由にした転職は対症療法にしかならず、目の前の問題に対する根本治療にはなりません。
それは捻挫につかう消炎鎮痛剤(シップ)のようなものです。
きっと時間が経てばまた同じところが痛み出します。だって根本的な原因は解決していないのですから。
根本的な問題の解決を避けると、必ず同じ問題がまた「場所」と「人」を変えて自分の前に現れます。どこの会社にも変わった人やトラブルメーカーはいます。
転職の経験がない人は「自分の職場だけが変人だらけ」だと思いがちなのですが、実際はそんなことはありません。
どこの会社でも人間の個性にそう大差なんてないのです。
「今の職場でできることはもうないのか?」。このことを今一度自問自答して欲しいと思っています。
あなたの退職理由は今の会社では解決できないことでしょうか?
環境を改善するために、そこでやれることはやってみましたか?
当然、一度やめればその場所には帰ってこれません。
今の職場で、状況改善のためにやれることをやり尽くす。転職を決めるのはそれからでも遅くはないと思います。これは3度の転職をした私の経験からお伝えしています。
さいごに
転職後に後悔しないために、状況好転のためにやれることをやり尽くしてから一切の未練を残さずスッキリ辞めましょう。
「今の職場でも上手くいったかもしれない」という可能性が少しでも残っていると、激しく後悔しますから。
自分にとって快適な「理想の職場」というものを追い求めるのではなく、どんな職場にも合わせられる人のほうが人生はラクに生きられます。
最も力の強いものが生き残るのではない。
最も頭のいいものが生き残るのでもない。
最も変化に対応できるものが生き残るのだ。
“最も環境に適した形質をもつ個体が生存の機会を保障される”
ハーバート・スペンサーのこの「適者生存」という概念はのちにダーウィンの進化論にも影響を与えました。
大げさかもしれませんが、あなたが今の職場に残っても他の職場に移ったとしても、そこで生き残っていくためにこの考えを心のどこかに留めておいてください。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願っています。