人間は、常に物事の程度を比較して考えています。
「火事で家が全焼したけど、家族が全員無事で何よりだった」あるいは「降格させられたけど、リストラにあわなくてよかった」という“不幸中の幸い”という考え方もそれに当たるでしょう。
ひどい目にはあったけれど、最悪の事態は避けられたのだからと自分の中で折り合いをつけて納得しようとするのです。
2つを比べて判断する習性
物事の判断基準は、世間一般の常識に準拠しています。
会社が人員整理をする際「会社をやめるか給料30%カットか」という条件を提示すると、ほぼ給料30%カットの選択肢が選ばれます。
「世間ではリストラが続いてる中、給料カットになっても仕事があるだけ自分はまだマシだ」と受けとめることができるのです。
つまり、リストラと給料カットを比べて判断しているわけです。心理学ではこれを「対比効果」といいます。
これも対比効果
任侠映画では何か不義理や失敗をした場合にケジメとして「命か小指か、落とすのはどっちだ?」と言われたりします。この場合、もちろん「小指」となりますよね。
小指で済んで「ラッキー」くらいに思えるかもしれません。
この対比効果を利用すれば、交渉を有利に運び相手を納得させることが可能になります。
値引き交渉時にも対比効果を
たとえば車を買い替える場合。本当はプリウスを買おうと思っていたとしても、トヨタの店で「車を買うのは来年のつもりだ」「ホンダにしようかと思ってる」という条件を比較対象として引き合いに出します。
その後に、自分が本来のんでもらいたい値引き条件を提示すると、高い確率でそれをのんでくれたりします。
ただし、対比効果は「対比の順序」を間違えると逆効果になるので注意が必要です。必ず『最悪の条件→それよりはマシな条件』の順に提示します。
上司への報告でも対比効果を
これは仕事の失敗を上司に報告するという胃の痛くなりそうな場面でも使えます。
会社にとって絶対に落とせない重要な5つの商談。全部まとめないといけなかったのに、そのうち1つを逃してしまった。
この状況を上司に報告する際の伝え方です。
間違った順序
「どうだった?」
「概ね上手くいきました!5つのうち4つは商談がまとまりました!」
「で、あと1つは?」
「すみません。1つだけはダメでした。でも4つ決まったんで上出来ですよね?」
「オマエ、アホか~!!始末書かいとけ!!」
正しい順序
「申し訳ありません。大失敗をしてしまいました」
「…」
(上司は一瞬、最悪の事態を想定する。固唾を呑んで報告を待つ)
「ど、どうだったんだ?」
「それが、契約を1つ逃してしまいました」
「ほかの4つは?」
「それは大丈夫だったんですが…」
「そうか。1つくらい仕方ない。気にするな」
(上司、安堵)
「また次、頑張ればいいさ。お疲れさん」
このように同じ内容でも、与える印象がずいぶんと違ってきます。ただ、言葉にする順序に気をつけただけです。是非、この対比効果をうまく使って立ち回ってください。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。