人間は「理由」に左右される生き物です。理由づけがあると急に強気になり、ないと弱気になるものです。
【理由づけ】
物事に対して、自分の納得できるような合理的な理由を付与すること。
本来の理由や根拠でなくても、何らかの理由を見出すこと。
出典:日本語表現辞典 Weblio辞書
大義名分に関する最も顕著な史実
理由づけの力を顕著にみることができる一例として明治維新直前の“戊辰戦争”が挙げられます。
戊辰戦争は1868年1月に起きた鳥羽伏見の戦いによってはじまります。このとき両軍の兵力は、新政府軍が約5,000人、旧幕府軍が約15,000人と言われています。
軍事的に優位だったのは、兵力で圧倒的に勝っていた旧幕府軍でした。
しかし戦いは、新政府軍の勝利に終わります。戦争の勝敗を決定づけたのは、「戦うための理由」の存在でした。
「理由」は士気にかかわる
鳥羽伏見の戦いの開戦直後、新政府軍に対して“錦旗・節刀”を与え、出馬する朝命が下ります。錦の御旗とは朝敵討伐の証として、天皇から官軍の大将に与えられるものです。
新政府軍は自らが天皇の軍であることを示す“錦の御旗”を掲げました。
これによって、新政府軍は「自分たちは天皇の軍、すなわち官軍である」という強力な理由づけを手に入れ、にわかに活気づいたのです。
一方の旧幕府軍は、相手方から“錦の御旗”が出たことで、天皇の敵すなわち賊軍となり、士気がみるみる衰えていきました。
当時は「幕府のために」という名分よりも、「天皇のために」という名分のほうがすでに強い時代になっていたのです。
そして、勢力からすれば圧倒的に有利だった旧幕府軍は、士気を失い敗走することになりました。
日常的によくあること
これほどのスケール感ではないにしろ、理由づけの力を感じる場面は日常生活でも頻繁にあります。
OLさんが「いつも頑張っている自分へのご褒美」という理由づけで高級スイーツやブランドのバッグを買うのも、その一つといえます。
あるいは一緒に遊ぶと子供が喜ぶことを理由にして何時間もずっとお父さんがゲームに興じているのもそうでしょう。
「仕事の付き合いだから」という大義名分での連日の飲み会もそう。
「休みの日に一日中家にいたら嫁さんも落ち着かないだろう」と理由をつけて、お父さんが朝から晩までパチンコ店に入り浸るのもそう。
相手の背中を押してあげる
つまり、人は何らかの正当な理由づけがあればやりにくいことでも、案外堂々とできるものなのです。
だから、相手が何か迷っているときにはその行動を正当化する理由を与えてやればいいのです。
そうすれば、相手の決断を早めることができるはずです。
セールスで実際に使われている話法
たとえば家電量販店のカメラ売り場の店員なら、上位機種を買うか安い下位機種かで迷っている男性客には「こちらの機種なら、奥様でも操作が簡単な便利機能付きですよ」といって上位機種を勧めます。
自分のためだけなら「高い」と思っている人でも、「家族のため」という理由があると、そっちを買おうという気になるものです。
この場合、自分だけでなく「家族のため」といった理由づけが客の判断に作用し高額商品に誘導するうえで効果的なセールストークになるわけです。
日頃の営業・販売活動にぜひ取り入れてみてください。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。